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無欲/日豪フットボール新時代 第141回

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昨年のグランド・ファイナル直後、チームメイトの阪下充(写真左)とやり抜いた満足感で笑顔を見せた前田尚輝(同右)(筆者撮影)

 マエダナオキと言っても、J1名古屋、オランダを経て現在J1浦和で活躍する“前田直輝”ではない。筆者が満を持して取り上げるのは、QLD州トップ・リーグNPL QLDで活躍する“前田尚輝”だ。

 湘南ユースからトップ昇格を果たし、その後、J3で経験を積み、フィンランド、カンボジアを経てオーストラリアにたどり着いたMF前田尚輝(27歳/ウィンナム・ウルブズ)。昨季は、NPL QLD(QLD州1部)のモートン・ベイ・ユナイテッドでプレー、グランド・ファイナルまで駒を進めた。年間王者を賭けた試合では、存在感を十分に発揮しながらも、タイトルにはあと一歩届かなかった。シーズン終了後、残留を望むクラブ以外にも州内外から多くの誘いを受けた中で、前田が選んだ移籍先は古豪ウィンナム・ウルブズだった。

 今季、FQPL1(QLD州2部)から復帰したクラブへの移籍で、昨年逃したタイトルへの再挑戦の道のりは険しくなったようにも見える。それでも、チーム作りのビジョンを熱く語り、いかに彼が必要かを説く旧知のファイフ監督の熱意を受け入れた。

 「昔からいつも挑戦的なチームでプレーしてきたし、背伸びせずに僕を真剣に必要としてくれたクラブや監督のために、がむしゃらにひたむきに頑張るだけ」と本人はぶれない。欠かさざるべき中心選手としてチームと共に高みを目指すことにフットボーラーとしての矜持(きょうじ)を見いだし、同時にプレーも楽しみながらタイトル奪取にも鋭く狙いを定める。

 中盤のあらゆる所に顔を出す汗かき屋の前田。中盤の底でバランスに腐心して相手の攻撃の芽を摘み、前線に質の良いボールを供給し続ける。体格は劣れども、運動量とプレーの正確性はオージー選手の追随を許さない。そのチームでの大きな存在感は、湘南の大先輩でもあるリバプールの遠藤航のそれに通じるものがある。

 そんな前田とウルブズのシーズンは、優勝候補として下馬評が高いGCナイツにまさかの0ー9で惨敗という最悪のスタートとなった。ただ、そこからチームは素早く切り替えられたことで立ち直り、第2節以降は4勝1分と負け知らずと好調を維持。例年以上に混戦模様のNPLで暫定2位に付ける(第6節消化時点)。

 「シーズン前から難しいシーズンになるのは想定していたし、あまり先のことは考えずに目の前の試合だけに集中していきたい」と気を緩めることはない。1つひとつ勝ち点を拾い上げ、積み重ねた先に、去年、取り損ねたタイトルが待っているはず。修行僧のような容貌(ようぼう)で中盤を支える男、前田尚輝の無欲の挑戦をしっかり追い続けよう。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカの呟き「サッカルーズのレバノン戦を観た。相手を問わずにフル・ハウス必至のマチルダスに比べて、スタジアムの半分にも届かない寂しい集客は、やはりスター選手不在が故か。まとまった良いチームになりつつあるが、いかんせん華がない。選手の小粒感が拭えない。いでよ、次代のスター候補生!」





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