アンザック・スクエア・メモリアル・ギャラリー/ブリスベンCBD
シティに行く時は、必ずセントラル駅の決まった改札をくぐり、地下通路からアンザック・スクエアに出るのがお約束だ。時間が許せば、階段を上がった所にある戦没者メモリアルに参るのもいつものルーティン。今回も、先の大戦での日本軍によるダーウィン空襲から83年目の記念日だったこともあり、日豪両軍の犠牲者へ慰霊の思いを捧げに寄った。
その足で、いつも通る地下通路脇の戦没者や退役軍人関連のレリーフの展示スペースをのぞいたら、趣ががらりと変わってスタッフ常駐のギャラリーにリニューアルされていた。
スクリーン上のインタラクティブな仕掛けでブリスベンや周辺地域の先の大戦との関わりを懇切丁寧に解説。四方の壁には、豪州が参戦した全ての戦役に出征したさまざまな部隊の栄誉をたたえ、犠牲者を慰霊するレリーフが今まで通りに飾られていた。
女性スタッフと言葉を交わしたが、「在豪邦人社会で日豪両国の過去の関係について知らない、知っていても興味がない人が多い」と思わず愚痴を言ってしまった。ローカル・メディアも「出稼ぎ」「親日」などといったキャッチーなネタばかりを届け続け、コミュニティーでも専門家の学術的アプローチ以外では、なかなかそういう事実が取り上げられることもない……うんぬん。
「それならば、彼が力になれるはず」と紹介されたのが、日本語が堪能な若い男性スタッフ。頼まれて日本語での簡単なグループ・ツアーを行うこともあるという。仮に、彼に依頼して在豪邦人向けのツアーを企画したら、いったいどれだけの人が興味を持つのだろうか。さすがにマンツーマンなんてことはないだろうけども。
植松久隆(タカ植松)
文・写真 タカ植松(植松久隆)
ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人