長期にわたり豪州不動産販売のアドバイスやサポートを手掛けるGIM Capital Professional Pty Ltdが豪州不動産市場の動向や情報を分かりやすく解説。
豪州不動産を購入する場合、信頼できる専門家に相談することが不可欠ですが、悪徳業者が存在することは事実です。今回は不動産業の「リスク」についてお届けします。
不動産購入の心理的背景
毎日を幸せに過ごすための大切な我が家。本来なら賃貸でも持ち家であっても愛着を持って暮らせるよう、気に入った住まいを手に入れたいはず。自宅保有者は安心・満足の反面、コロナ禍で値上がりした価格と家賃、インフレの上、空前の住宅不足でなかなか引越しができず、賃貸者には世知辛い世の中となりつつあります。
都市集中、人口増加、供給過少の3拍子がそろう豪州では、住宅を購入しておいた方が将来が豊かになると頭では分かっていながらも、「高金利」が気になるし、周りの人たちも購入していないから大丈夫と考えている人もいるでしょうか。慎重派の日本人の中には、以前の安い物件価格を覚えているが故に購入できず、そのまま賃貸状態が続いているという方々も多いような気がしますがいかがでしょうか。
本連載では、なるべく詳しい説明をして読者の方々に知識を増やして頂き、安心して不動産を購入できる心の準備をしてもらいたいと切望していますが、実際には、不動産購入の際、販売会社によって「影」の部分があると言わざるを得ません。今回は、そんな社会の「闇」に迫ってみたいと思います。もちろん情報をきちんと精査した上での発信となり、そういう悪徳業者には関わらないようにするための救済法のつもりです。こういうことも起こり得るという解説が目的なので、必要以上におびえないようにお願いします。
不動産購入ができなかった、もしくは想像とは異なったという悲劇的結末
豪州に限らず、不動産建築を計画時点で販売し、完成を待って住居もしくは投資物件として利用する方法は存在します。アジア方面では「プレビルド」と称されることがあるようですが、豪州では「オフ・ザ・プラン」と呼ばれています。ファースト・ホーム・バイヤーで5%、その他の場合は一般的に10%の頭金を支払い、数年後の集合住宅の完成を待ち、その後に物件価格とその他の費用を支払い自分の物件として政府に登録をすることになるのですが、注意しておかなくてはならないのは、販売価格が法外・高額だった場合、例えば2年後に完成した際の評価価格が当初の販売価格には満たないということが起こり得るのです。
現金で購入する場合は問題ないのですが、銀行に融資してもらう場合、金融機関から依頼された評価員が適正価格を算出します。例えば、100万ドルで物件を契約し、8割を銀行が貸し出すとなると80万ドルを借りる場合が基本的に多いので、完成した時期に頭金を含めた物件価格の2割の現金、20万ドルをローンのために用意しているとします。しかし、もしその物件の評価が完成後に90万ドルに下がってしまった場合、90万ドルに対しての8割、つまり72万ドルしか融資を受けることができなくなる可能性が出てきます。その場合、当初の契約の価格分の支払いはそのままなので、現金で総額28万ドルを銀行に支払わなくては融資が整いません。当初10%の頭金を支払い、本来は10万ドルのみを準備するだけだったものが、完成してから評価員が1割低く評価したため、急きょ現金18万ドルの銀行への支払いが発生します。これが「見込み違いによるリスク」です。
準備することなく用意が整うのかというと、それはその契約書次第です。QLD州とNSW州では融資が整わなかった場合には、最初の10%の頭金没収という契約になっていることが多いです。(契約書次第なのでお確かめください)またVIC州に関しては「名義書き換え」が可能である場合が多いため、他の人に名義を譲ることができ、救済策となります。
購入前の知識と倫理性
購入者としては大事な10%分の資金を失い、更に不動産も手に入らないという最悪な事態は避けたい、避けるべきです。親切な不動産会社であればその説明を行い、どのように購入のための手続きをするかなどを契約する「前」に教えて当然だと思いますが、その逆の業者も存在するようです。顧客視線で不動産購入を支える業者であれば、自らのクライアントを救うために金融機関での確認などを推奨します。
しかし、故意に「闇落物件」を販売し購入者が資産を失うことを助ける気持ちがない業者もいるようです。例えば契約書に署名する前には、執拗に営業の電話が数時間おきにかかってきたのに、決済時期になると電話が通じなくなり途方に暮れる、訴訟物件なのに教えてもらえなかった、保険会社の制定するリスク認定エリアなのにそれを知らせない、産業廃棄物跡地であってもその事実を伝えない、オークションを行っていないのに既に行い誰も買わなかったと虚偽の報告を売却希望者にするなど、目を覆いたくなるようなプロ意識が欠落した悪徳な行為を行う業者さえ存在すると聞いています。
モラルアップと安全性
どの国にもどの産業にも悪徳業者は存在するのかもしれません。しかし、不動産は安価ではないため、細心の注意を図り購入者を助け、寄り添う専門家から知識を広げることが昨今重要なのではないでしょうか。暮らしを守るのは住宅で、生活を豊かにするのは家庭です。ファミリーだけでなく、独身者においても快適な暮らしは不可欠です。少しずつ知識を増やし、悪徳業者がはびこるのを防止することが大事なのではないでしょうか。不動産業は社会的に責任がある産業です。ぜひ、闇物件、悪徳業者の被害に遭わないように賢い選択をして欲しいものです。
鶴美枝
グローバル・インテリジェンス・マネージメント代表。創業2010年以来、豪州各地の優良不動産を厳選し、豪州及び日本在住のホーム・オーナー若しくは投資家の方々の購入をサポートし資産増幅、理想の住まいの確保に日々尽力中。日本と豪州にて法学部大学院卒業。豪州不動産フル・ライセンス保持