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【特集】グローバル人材を育成する教育とは
米国でバイリンガル教育を受けた水田早枝子取締役が、苦労した経験を生かして2014年に創業した「TCK Workshop」。生徒が海外経験を一生の財産にできるよう、現地校のサポートから帰国後の受験対策、各種英語検定対策まで、幅広く手掛けるオンライン家庭教師サービスについて、水田取締役に話を伺った。
──幼少期の海外経験は、語学や国際感覚を身に付けることができる反面、帰国後の苦労も多いでしょう。両親や生徒はどのような心構えが必要ですか。
幼少期の異文化体験は、お子様の性格や能力、ご家族との関係、アイデンティティーに大きな変化をもたらします。「異文化を理解し受け入れようとする柔軟性が手に入る一方で、どの国も完全には居場所ではない感覚を持つ」といったように、影響はメリットとデメリットがセットになって現れます。個性と混ざり合い、大人になっても何かしらの形でずっと影響を与え続けることが多いと思います。
私自身、大人になった今こそ、海外経験ができて本当に良かったと感じ、2言語が自由に使えて、日本の大学とアメリカの大学院の両方を経験できるなど、2人分の人生を生きているような豊かさに恵まれていると感謝しています。しかし、子供時代は混乱していて、不安や劣等感、つらい気持ちを感じていました。
変化の渦中にあるお子様にとって、言葉が通じない、「自分」が変わってしまう、学校の勉強の内容や子ども同士の人間関係が全く違う環境の中で「自分」だけが異質、将来の見通しが立ちにくい、といったことが、大きな混乱を伴うものだということを知っておいて頂きたいです。子どもは気持ちを必ずしも言葉にできないばかりではなく、「こんな風に感じているのは自分だけではないのか」と抱えてしまいがちです。
そうした環境でご家族の役割は非常に大きいです。居場所として、またアイデンティティーのよりどころとして、家族に「話を聞いてもらえる、しっかり対話ができる」とお子様が思えることがとても重要です。ご家族の負担は決して軽くはないのですが、長い人生で考えるとお子様が「意見は違っても、いつも最後まで聞いてもらえた」と感じ、ご家族としっかり対話ができていることは非常に大切だと感じます。
── 帰国生は、学力・進学の不安、アイデンティティーの喪失、身に付けた外国語を忘れてしまう、といった問題に直面します。海外・帰国子女教育の大切さについて考えを聞かせてください。
3つとも大切なテーマで、互いに重なり合っていますよね。勉強の面では「日本の学校の勉強について行けるか」と同じくらい「英語力を一生の財産として維持向上できるか」といったご相談が多いです。また、できるだけ帰国生として適応しやすい学校を選んで受験したいというご要望も多く聞きます。TCK Workshopでは、「正解」は1人ひとり違うと考えています。2000人以上の生徒を教えてきた経験を生かし、短期と長期の両方の視点で、生徒が最大限幸せな一歩を踏み出せるサポートを心掛けています。
子どもが2言語以上を学びながら育つことは「学習の妨げやハンディキャップになる」と考えられていた時代がありましたが、現在では「言語は子どもの文化とのつながりやアイデンティティーに関わる大切なものなので、一概に『良い、悪い』を判断するべきではない。多くの要素が複雑に絡み合い、『損か、得か』を勘定することはそもそもできない」といった認識があります。
ただ単に話せるだけではなく「2言語以上を使って学校で学習できる」レベルになり、かつ維持向上するのは、想像を絶するほど大変です。一般的に「学校で学び、将来仕事に使える抽象的な言語運用能力」の習得には、少なくとも5年を要すると言われており、それは「基本的な意思疎通に必要な会話力」とは別の能力と考えられています。そのため、幼い頃に2言語の学習を始めたお子様にも、10歳以上になって始めたお子様にも、それぞれ違った難しさと可能性があります。
また、日本の学習に追いつき、日本の教育システムで評価され、チャンスをつかむポイントとは、「与えられた環境を生かして、全ての言語で共有できる知識や能力を深く開拓しておくこと」、「向こう3年で必要になる学力や能力をしっかり調べ、計画的に備えておくこと」、「全てが同時にできなくても、まずは自分が意欲をもって努力できそうな良い環境を獲得することに集中すること」だと考えています。
──TCK Workshopならではの特長や実績は?
帰国枠人気校への進学実績が高いのはもちろん、日米英IB(インターナショナル・バカロレア)など世界のカリキュラムを日本語と英語で教えられるため、さまざまな背景の帰国生に寄り添い、課題を解決し、生徒や家族が思い描く未来を形にしていくサポートができます。今年は東京大学に合格した生徒もいれば、チュラロンコン大学に合格した生徒もいます。ただ勉強を分かりやすく教えるだけでなく、自信を付けさせ、目標を持たせ、生徒が「海外経験が自分の財産になった」と思える日が来ることを目指して、生徒やご家族と向き合っていく。それが、私たちのミッションだと考え、日々の業務に励んでいます。