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アーチボルド賞有名作品展/NSW州立美術館ボランティア・ガイド便り

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執筆者=鴨粕弘美(NSW州立美術館日本語ボランティア・ガイド)

 
 今回は、過去のアーチボルド賞の有名作品を入場料無料で鑑賞できるというご案内です。美術館のNaala Nura(ナーラ・ヌラ 南本館)を入って左手にインフォメーション・デスクがあるKaldor Hallに展示されているのは、アーチボルド賞展にちなんだ美術館所蔵の13作品。右手にアーチボルド賞受賞作、2022年のブラック・ダグラスと05年のジョン・オルセンの作品を見ることができます。

Blak Douglas ‘Moby Dickens’ 2022, synthetic polymer paint on canvas, 300 x 200 x 3.3 cm, Art Gallery of New South Wales, purchased with funds provided by the Aboriginal Art Collection Benefactors 2022 © Blak Douglas, image © Art Gallery of New South Wales

 ブラック・ダグラスは、過去何回も入選しているアボリジナル・アーティスト。22年の同作品でNSW州のアボリジナル・アーティストを称え、気候変動による世界的な不安の時代の危機感を示しました。グリーン・ピースに加わり、環境保護活動に積極的に関わるアーティスト、カーラ・ディケンスがモデルで、リズモア洪水に際し泥水の中でバケツを両手に持って厳しい視線をこちらに向け怒りをあらわにして力強く立つ大画面は迫力満点です。

John Olsen ‘Self-portrait Janus-faced’ 2004–05, oil on canvas, 182 x 200 cm, donated through the Australian Government’s Cultural Gifts Program by Louise Olsen and Tim Olsen 2024 © Estate of John Olsen, image © Art Gallery of New South Wales

 また、亡くなる直前まで現役アーティストであり続け、昨年4月に95才で亡くなったジョン・オルセンの作品は、自画像。サルマン賞や風景画のウィン賞を受賞していながら、77才にして初めてアーチボルド賞を受賞したものです。100年以上のアーチボルド賞の歴史で最高齢の受賞者となりました。ヤヌスの顔という副題があり、後方と前方の両方を見通す能力を持つと言われたローマ神話に登場する出入り口、通路や橋の神であるヤヌス。2つの頭が反対方向を向いた姿で描かれています。

Vincent Namatjira ‘Studio self-portrait’ 2018, synthetic polymer paint on linen canvas, 152 x 198 cm, Art Gallery of New South Wales, Gift of Geoff Ainsworth AM and Johanna Featherstone 2018 © Vincent Namatjira, image © Art Gallery of New South Wales

 このほか、20年にアボリジナル・アーティストとして初めてアーチボルド賞を受賞したビンセント・ナマジラの18年の自画像。1978年にアーチボルド、ウィン、サルマンの3賞を独り占めしたブレット・ホワトリーが1980年に彫刻家の親友を描いた作品(長い歴史の中で3つの賞を同時に受賞したアーティストは、ホワトリーのみ)。2011年にアーチボルド賞を受賞したベン・クイルティの15年の自画像など、錚々たる顔ぶれのアーティストの作品が並びます。

 この機会に名だたるオーストラリア人アーティストの肖像画作品を鑑賞するのも一興では? このほか、さまざまな無料の展覧会もたくさん行われているので、美術館サイト(Web: www.artgallery.nsw.gov.au)をご確認の上、ぜひお出掛け下さい。

 現在、NSW州立美術館では、2つの特別展「2024アーチボルド賞展(Archibald Prize)」と「アルフォンス・ミュシャ展(Alphonse Mucha : Spirit of Art Nouveau)」が盛況で、8月・9月は日本語ツアーも行われています。ぜひ奮ってご参加下さい。

◉アーチボルド賞展

会期:開催中、2024年9月8まで
会場:Naala Nura(南本館)地下2階
チケット:$18~25 
*無料日本語ツアー:会期中の土曜日(8月3・10・17日)、ツアー時間:10:30AMから約1時間、無料
参加方法:入場券要、予約不要、集合場所:地下2階展覧会入り口

◉アルフォンス・ミュシャ展

会期:開催中、2024年9月22日まで
会場:Naala Badu(北新館)地下2階
チケット:$18~35  
*無料日本語ツアー:会期中の日曜日(8月4・11・18・25日、9月1・8日)ツアー時間:10:30AMから約1時間、無料
参加方法:入場券要、予約不要、集合場所:地下2階展覧会入り口 

◉ハイライト・ツアー 

・Naala Badu(北新館)
開始時間:毎週日曜日1PM
集合場所:エントランス・パビリオン 
・Naala Nura(南本館)
開始時間:毎週金曜日11AM
集合場所:インフォメーション・デスク付近
※いずれもツアー時間は約45分、無料、予約不要、常設展は入場も無料、 直前に変更等の可能性もありますので、美術館の日本語ウェブサイトをご確認の上ご参加下さい。皆様のご来館をお待ちしています。

お知らせ
●2024 年4月、NSW州立美術館の2つの建物に先住民の言葉の新しい名称がつけられました。
「これらは先住民の知識と言語への深い敬意とともに、当美術館の場所の特異性と歴史の重なりを認識するものです」とマイケル・ブランド館長は語る。
Naala Badu(ナーラ・バドゥ 北新館)“seeing waters”  水辺を臨む
Naala Nura(ナーラ・ヌラ 南本館) ”seeing Country”  大地を臨む

Art Gallery of NSW

ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州立美術館。南本館に加え、日本人建築家ユニットSANNAのデザインによる北新館が2022年12月に新築オープンした。常設展は入場無料。
Web: www.artgallery.nsw.gov.au
日本語サイト:www.artgallery.nsw.gov.au/visit/plan-your-visit/information-in-other-languages/japanese



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