コロナ禍がようやく過去のこととなり、オーストラリアに学生やワーキング・ホリデーでやって来る日本の若者がまた増えてきている。ワーキング・ホリデー・ビザには、通常1年間の有効期限のところ、政府指定の地域(都会から離れたエリア)で季節労働をすることでもう1年期間を延長できるという制度があり、現地の農園や農場での仕事に就く日本人も多い。
この農地や農園、農場という言葉。日本語ではそれぞれの言葉で思い浮かべる場所が、田んぼ、畑、果樹園、牧畜などに分かれている。ところが、これを全部ひっくるめて短い言葉で言い表せる便利な単語が、「ファーム」という英語からの借用語だ。
日本でも「ファーム」という言葉は既にある程度浸透していることもあって、オーストラリア在住の日本人同士、特にワーホリ(ワーキング・ホリデー・メーカー)の若者の会話でもかなり頻繁に登場する単語の1つだ。
農場での仕事を意味する「ファーム・ジョブ」という言葉はもちろん、「ピッキング・ファーム(収穫する仕事のあるファーム)」、そして収穫物や動物の名前とくっ付けて「バナナ・ファーム」「いちごファーム」「グレイン(穀物)・ファーム」「肉牛ファーム」「アルパカ・ファーム」といった具合に使われることが多い。
また、仕事ではなく旅行者に向けの情報には「ファーム・ステイ」といった言葉も使われるようだ。中には「ファームする」「ファームできる場所」といったように、「ファームの仕事」という意味を含む動詞性のある名詞として使われるケースもあった。
また、英語で「ファーム・ハウス (farm house)」と言えば、農地のすぐ横に建つ住居のことで、昔ながらの建築方法で建てられた、広大な敷地に建つ美しい木造の家を指すことが多い。ただ、実際のファームでは、敷地内にある大人数用のシェア・ハウスなどの宿泊施設を「ファーム・ハウス」と呼んで、従業員用に使っていることもあるようだ。
プロフィル
ランス陽子
フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「オーストラリア弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/JapaneseVariationInAUS)