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ハーグ条約の役割とは?─オーストラリアにおける親権問題/豪州ビザ最新事情

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 オーストラリアの親権問題は、家族法に基づいて解決される重要なテーマです。特に国際的な親権争いが増加しており、ハーグ条約(国際的な児童の奪取の民事上の側面に関する条約)が重要な役割を果たしています。本記事では、オーストラリアの親権問題とハーグ条約に関する現状、及びその解決に向けた取り組みについて説明します。

オーストラリアにおける親権の基本概念

 オーストラリアでは、親権に関する問題は家族法(Family Law Act 1975)に基づいて解決されます。親権は子どもの養育と教育、医療、宗教、住居など重要な決定を行う権利と義務を指し、大きく分けると以下の2つのタイプがあります。

1. 共同親権(Joint Custody): 両親が共同で子どもの養育に関する決定を行う。
2. 単独親権(Sole Custody): 一方の親が決定権を持ち、もう一方の親は面会権のみを持つ。

 それぞれの親権を「子どもにとって何が最善」であるかを基本に決めることとなります。

ハーグ条約とは

 ハーグ条約は、1980年に国際的な児童の奪取(誘拐)に関する問題を解決するために制定されました。条約の主な目的は、不法に連れ去られた子どもを迅速に元の居住国に返還し、子どもの最善の利益を保護することにあります。

 オーストラリアは1983年にこの条約を批准し、国際的な親権争いにおいて重要な役割を果たしています。特に近年国際結婚をする人が増えたことを背景に、国際間での離婚、そして親権問題が珍しくなくなりました。

 国際的な親権争いが増加しており、一方の親が子どもを他国に連れ去るケースが増えています。そのため、ますますハーグ条約の適用が重要となってきています。オーストラリアの家庭裁判所は、この限りではありませんが、以下のような要因を考慮して親権を決定します。

・子どもの最善の利益
・子どもの安全と福祉
・両親の関係性とコミュニケーション能力
・子どもの年齢と希望
・子どもの育成環境

 実際に、ハーグ条約の適用には多くの課題が存在し、例えば、条約加盟国間での法律や手続きの違いが影響し、子どもの返還が遅れることがあります。また、家庭内暴力や虐待の問題などが絡む場合、親権の決定は非常に複雑になります。

 オーストラリアでは、ハーグ条約の適用を通じて親権問題の解決に向けた取り組みを進めており、現在以下のような施策が実施されています。

・調停サービスの拡充:裁判に頼らず、調停を通じて合意に達することを促進する。
・親教育プログラム:両親に対して、子どもの最善の利益を考慮した養育方法を学ぶ機会を提供する。
・国際協力の強化:他国の司法機関との協力を強化し、子どもの迅速な返還を実現する。

 オーストラリアの親権問題は複雑であり、特に国際的な親権争いにおいてはハーグ条約が重要な役割を果たしています。子どもの最善の利益を最優先に考え、政府や司法機関が協力して適切な解決策を提供することが求められています。そのため、問題が深刻化しない内に専門家からのアドバイスを受けることが重要です。

アドバイザー

清水 英樹

清水 英樹

オーストラリアQLD州弁護士。在豪30年以上。地元大学卒業後、弁護士資格を取得。フェニックス・グループCEOとして傘下にあたる「フェニックス法律事務所」、ビザ移民コンサルティング「Goオーストラリア・ビザ・コンサルタント」、交通事故ならびに労災を専門に扱う「Injury & Accident Lawyers」を経営

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