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オーストラリアで遺言状を用意しておかないと起こり得る問題とは?−遺言状の必要性/豪州ビザ・法律最新事情

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 「オーストラリアでも遺言状を用意しておいた方が良いでしょうか?」という質問をよく受けます。その回答は、個々のさまざまな状況により異なるため、一概に必ずしも「必要」であるとは言えませんが、一般的なアドバイスとしては遺言状を手配しておくメリットはあります。そこで、今回は遺言状を用意しておかないことで起こり得る主な問題について話したいと思います。

1. 相続手続きの複雑化と長期化

法定相続人による争い

 オーストラリアには法定相続に関する法律があり、遺言状がない場合についてもその相続手続き、方法などについて決められています。そのため、生前自分の希望する相続人に、希望する金額を残すことができなくなることが生じます(例えば、離婚はしていないが別居中の配偶者に相続権は発生するのか、何年も一緒に住む内縁関係にあるパートナーの連れ子の権利など)。法定相続人が複数いる場合、相続分をめぐる争いが起こる可能性が高まることも考えられます。たとえ、身内同士であっても相続割合を巡って意見が対立し、長期間にわたる法廷闘争に発展するケースも残念ながら少なくありません。

意図しない相続

 遺言状がない場合、法定相続分に基づいて遺産が分割されるため、ご自身が大切にしたい人やものに遺産が渡らない可能性があります。例えば、配偶者よりも子どもに多く遺産を残したい場合や、特定の団体に寄付したい場合などは、遺言状がないと意図した通りの遺産分割ができません。

手続きの煩雑さ

 遺言状がない場合、相続手続きは非常に複雑になります。被相続人の相続手続きを行う遺産管財人を誰とするか、遺産の調査、相続人の確定、遺産分割協議など、多くの手続きが必要となり、時間と費用が掛かることになります。遺言状を残した場合と残さなかった場合において、専門家である弁護士に依頼する必要も出てくるため、残された遺族にとって、経済的な負担も大きくなる可能性があります。

2. 遺産分割における問題

相続人の経済状況の無視

 法定相続分は、相続人の年齢や経済状況などを考慮せずに決められます。そのため、未成年への相続、金遣いに問題のある相続人、経済的に困窮している相続人など、状況に応じた形での妥当な遺産を受け取れない可能性が生じます。

相続人の同意が必要

 遺言状がない場合、不動産を売却したり、処分したりするためには、全相続人の同意が必要になります。相続人の数が多かったり、海外に住んでいる相続人がいたりする場合など、全員の同意を得ることは非常に困難です。

手続きの遅延

(前述にあるように)相続人全員の同意が必要な場合、全員の同意を得るまでに時間が掛かり、特に不動産など資産の売却や処分が遅延する可能性があります。しかし、その間にも、そうした不動産の維持費、固定資産税などの費用が掛かり続けることになり、遺族への経済的な負担が増えることとなります。

3. 事業の継承が困難になる

事業の存続の危機

 家族経営の事業の場合、遺言状がないと、事業の継承がスムーズに行えない可能性があります。そして、相続人全員が事業を継承したいとは限らず、事業の分割や売却を主張する相続人が出てくる可能性もありますが、そうした事態に柔軟に対応することが難しくなります。

従業員への影響:

 もちろん、事業の継承が遅れると、従業員の雇用が不安定になり、事業の存続が危うくなる可能性もあります。そのため、自営業の方の場合には、事業相続に関してもきちんとした計画を立てておくことが強く勧められます。

4. 精神的な負担

遺族への負担

 遺言状がないことで相続人同士の争いが起こると、遺族は精神的な苦痛を味わうことになります。特に、高齢の両親を介護している子どもがいる場合、相続問題に時間を取られることで、介護が疎かになってしまう可能性もあります。

 オーストラリアで遺言状を用意しておくことは、ご自身の死後、残された家族や親族がスムーズに相続手続きを進め、ご自身の財産を適切に処分するために非常に重要です。遺言状を作成することで、相続に関するトラブルを未然に防ぎ、ご自身の意思を確実に実行することができます。そのため、遺言状の作成は、専門家に相談することをお勧めします。

*本記事は、一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。ご自身の状況に合わせた具体的なアドバイスについては、専門家である弁護士にご相談ください。

アドバイザー

清水 英樹

清水 英樹

オーストラリアQLD州弁護士。在豪30年以上。地元大学卒業後、弁護士資格を取得。フェニックス・グループCEOとして傘下にあたる「フェニックス法律事務所」、ビザ移民コンサルティング「Goオーストラリア・ビザ・コンサルタント」、交通事故ならびに労災を専門に扱う「Injury & Accident Lawyers」を経営

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