レイク・ワイヴァンホー/ブリスベン郊外
レイク・ワイヴァンホー(Lake Wivenhoe)は、ブリスベン中心部から50キロほど内陸にあるワイヴァンホー・ダム建設によってできた人造湖。ブリスベンやイプスウィッチという都市エリアの水瓶は、週末は、人びとの憩いの場として多くの人でにぎわう。
先日、そんな湖に冬(とは言っても、亜熱帯QLD州のそれ)のキャンプに行ってきた。スクール・ホリデー中ではないこともあって人も多くない。絶景の湖畔の一等地で荷を解き、まずは友人の“撮ってだし”のうまい日本酒を飲みながら、薪をくべ焚き火を囲む。夕食には極上のWAGYUの焼き肉。燃えるような夕焼けと共に日が落ち、しばしの黄昏時の美しさをつまみにビールをすするうちに、辺りは漆黒の闇の静謐(せいひつ)に包まれる。見上げると、目を凝らさずとも天の川や流れ星が見える満天の星空。至福の時間がゆったりと流れていった。
翌朝、目覚めると湖には一面の朝靄。そんな幽玄な雰囲気をコッカトゥー(cockatoo=キバタン)のダミ声がかき消す。目玉焼きにカリカリのベーコン、アボカドを乗っけたバケットの朝食を食べていると、湖畔にはカンガルーの姿。のんびりと草を食むその姿を仰ぎ見ながらのサンデー・ブレッキー、いやはや何ともオージーなキャンプだこと。
夕焼け、薄暮(はくぼ)、闇夜、朝ぼらけ、それぞれの時間帯でさまざまな顔を見せる湖畔は落ち着いた大人のキャンプに最適。年々、ブリスベンも世知辛い都市環境にかつてのゆったりした雰囲気が希薄になってきているが、都心からわずか1時間ほどで気軽に別世界を味わえる場所でのキャンプという楽しみが残されていたとは。無粋な無趣味人間が、遅ればせながらアラフィフにしてキャンプの楽しさに目覚めてしまったかもしれない。
植松久隆(タカ植松)
文 タカ植松(植松久隆)
ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人