執筆=浜田千恵(NSW州立美術館日本語ガイド)
早速ですが、こちらの作品をご覧ください。リンゴですね。でもよく見ると、一部屋全てを埋め尽くしています。この絵に描かれた尋常ではない大きさのリンゴは現実にはあり得ませんが、その影を帯びた姿は、やけに写実的で現実味を帯びています。
では、次の作品はいかがでしょうか。山高帽にスーツ姿という同じ格好をした大勢の男たちが、それぞれ直立不動で均一に空中に浮いています。
これらの作品を描いたのは、シュルレアリスムの巨匠、ルネ・マグリットです。
リンゴも、部屋の一室も、スーツ姿の男も、住宅街も、それだけをとって見ると、私たちにとってはありふれたものであり、日常の光景です。しかし、ひとたびマグリットの手に掛かると、私たちの想像を超えた不思議で幻想的な世界がもたらされます。
現在、NSW州立美術館Naala Nura(ナーラ・ヌラ 南本館)で、オーストラリアではほとんどの作品が初公開となる回顧展「マグリット」が開催中です。20世紀ベルギーを代表するアーティスト、ルネ・マグリットの100点以上の展示作品を通して、その画業に迫ります。
彼の生み出すシュールな世界を、私たち日本語ガイドと一緒に間近で鑑賞し、体感しませんか? マグリットの破壊的なユーモアのセンスと、芸術に対する激しいまでの独自性に、いつしか引き込まれてしまうこと必至です。
マグリット展の日本語ガイドは11月3日(日)より毎週日曜日午前11時から実施されます。どうぞお見逃しなく。
特別展「マグリット」
会期:開催中~2025年2月9日(日)
会場:Naala Nura(南本館)地下2階
入場料:大人$35ほか
【「マグリット」展の無料日本語ガイド・ツアー】
11月3日(日)~2025年2月2日(日)の毎週日曜日午前11時より
(ただし年末年始の12/25~1/5は除く)
集合場所:展示会場入り口
ハイライト・ツアー
・Naala Badu(北新館)
開始時間:毎週日曜日1PM、集合場所:エントランス・パビリオン
・Naala Nura(南本館)
開始時間:毎週金曜日11AM、集合場所:インフォメーション・デスク付近
両ツアーとも約45分間、無料、予約不要です。 直前に変更などの可能性もありますので、美術館のウェブサイトをご確認の上、ご参加ください。
お知らせ
●2024 年4月、NSW州立美術館の2つの建物に先住民の言葉の新しい名称がつけられました。
「これらは先住民の知識と言語への深い敬意とともに、当美術館の場所の特異性と歴史の重なりを認識するものです」とマイケル・ブランド館長は語る。
Naala Badu(ナーラ・バドゥ 北新館)“seeing waters” 水辺を臨む
Naala Nura(ナーラ・ヌラ 南本館) ”seeing Country” 大地を臨む
Art Gallery of NSW
ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州立美術館。南本館に加え、日本人建築家ユニットSANAAのデザインによる北新館が2022年12月に新築オープンした。常設展は入場無料。
Web: www.artgallery.nsw.gov.au
日本語サイト:www.artgallery.nsw.gov.au/visit/plan-your-visit/information-in-other-languages/japanese