今年も各辞書出版社からの新語大賞候補が発表されている。日本で暮らし、新語を日常的に取り入れている若者世代からすると、こういった新語大賞に登場する言葉に違和感を感じることが多いようだ。既に数年前から使い古されている言葉が今年になってノミネートされていたり、あまり使われていないと感じる言葉も入っていたりするようである。
とは言え、こういった新語のリストは現在の日本の世情の一部を反映していることには間違いないだろう。
ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた30語の内、今年は外国語からの借用語または借用語を含む言葉が13語、アルファベットまたはアルファベットを含む言葉が3語あった。ちなみに昨年は、借用語が同じく13語、アルファベットを含む言葉は9語。2022年は借用語15語、アルファベット8語。過去2年と比べると、今年は若干アルファベットを含む言葉が減っているようだ。
面白いのは、借用語を使って日本独自に発展させた言葉が数語あること。特に「インバウン丼」「カスハラ」「ソフト老害」といった複合語は興味深い。
海外からの旅行者という意味の英語、インバウンドと食べ物の〇〇丼を合わせたインバウン丼。適正価格をよく知らない外国人旅行者をターゲットとしたぼったくりのような高級海鮮丼をこのように表現するとは、なんとも感心してしまう。
カスハラは、英語の「customer harassment」から借用されたカスタマー・ハラスメントの略。2つの単語の語頭2拍を使った典型的な省略語のパターンだが、カスという響きを使うことで、かなりネガティブな効果をもたらしている。顧客からのハラスメント、という意味だ。
ソフト老害という単語も新鮮な組み合わせだ。借用語は、借金をローンと言い換えたり、妊婦服をマタニティー・ウエアと言い換えたりなど、従来の言葉よりも柔らかいニュアンスを与える言葉として使われることが多い。若年層によるちょっとした老害、とでもいうような、ただ「老害」と言うよりも柔らかい印象を持たせるために付け加える形容詞として「ソフト」という言葉を選ぶとは、言い換えさえもないかなり直接的な用法である。現在までにソフト〇〇という言葉は、英語を直接借用したソフト・ランディング以外にあまり思いつかないのも不思議なくらいだ。似たようなケースには、「マイルドヤンキー」という言葉もある。
この30語の中から、12月2日に今年の大賞が発表される。
「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞 第41 回 2024年 ノミネート語
No.1 アサイーボウル
No.2 アザラシ幼稚園
No.3 インバウン丼
No.4 裏金問題
No.5 界隈
No.6 カスハラ
No.7 コンビニ富士山
No.8 侍タイムスリッパー
No.9 初老ジャパン
No.10 新紙幣
No.11 新NISA
No.12 ソフト老害
No.13 トクリュウ
No.14 南海トラフ地震臨時情報
No.1 5猫ミーム
No.16 はいよろこんで
No.17 8番出口
No.18 はて?
No.19 Be Real
No.20 被団協
No.21 50-50
No.22 ふてほど
No.23 Bling-Bang-Bang-Born
No.24 ブレイキン
No.25 ホワイト案件
No.26 マイナ保険証一本化
No.27 名言が残せなかった
No.28 もうええでしょう
No.29 やばい、かっこよすぎる俺
No.30 令和の米騒動
プロフィル
ランス陽子
フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「オーストラリア弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/JapaneseVariationInAUS)