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再臨/日豪フットボール新時代 第149回

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ライフワークのジュニア世代の指導には自然と熱がこもる(写真=本人提供)

 常日頃、豪州フットボール界隈での日本人選手の動向は気にしている。そんな中で、日本人にしては珍しく「Dave」なるイングリッシュ・ネームを名乗る選手に筆者の内蔵レーダーが反応したのは、かれこれ5年以上前の話だろうか。

 彼が運営する日系の子ども対象のフットボール・スクール「ジャパン・スポーツ・コネクト」が人気を博していることも耳に入っていた。インスタグラムのアカウント名では「Big Dave」を名乗る男に話を聞きたいとコンタクトを取ってみて驚いた。すっかり、ゴールコーストにいると思い込んでいた男は、自身の郷里、鹿児島は指宿にいると言うではないか。

 Daveこと田中裕介(27)。指宿商業の高校時代は無名選手だったが、情熱あふれる恩師の下でフットボール愛をひたすら育んだ。卒業後、しばらくはあこがれの消防士になろうと努力したが、フットボールへの熱い思いを捨て切れず、日本を飛び出して、何の縁もないゴールドコーストに単身降り立った。その時、郷里の公報での成人の抱負に“ビッグになる”と書いた青年は20歳になったばかりだった。

 やがて、ゴールドコーストの街クラブでプレーを始めるが、なかなか名前を覚えてもらえない。そんなある日、突然、チームメイトに“Dave”の2つ名を与えられた瞬間から天性のコミュ力を駆使したクラブの愛されキャラ、Daveという新たなペルソナが誕生。その後の7年、Daveは人知れず努力を重ねて、ゴールドコーストの街に深く根付いていった。

 そんな本人は、激動の7年を「よく(海外へと)1歩を踏み出せたなと。でも、まだ通過点。何も“大きいこと”は成し遂げていないから」と冷静に総括する。その“大きいこと”は、との問いには「世界のフットボールを知らない子どもに自分が愛するフットボールを知ってもらいたい」との壮大な夢を語る。

 その夢を叶えるには、しっかりとした拠点を築く必要があるとの考えで、フットボールで得た人脈からオファーされた左官業で実績を積み、永住権につながるビジネス・ビザ申請の準備を進めている。現在は、ビザ取得に有利となる高度技術習得のために故郷で左官業に従事しながらビザ申請の日に備える。

 フットボールこそ人生と言い切る男は、自身のモットーである”努力”を続けて、フットボールコーチとして着実に成果を出してきた。それでも彼の挑戦は止まらない。自力でビザを勝ち取り、Big Daveが更にビッグになってゴールドコーストに再臨する日はそう遠くない。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカの呟き「男女Aリーグが開幕。新加入オークランドの元日本代表の酒井宏樹や地道な努力の結果の国内昇格を勝ち取ったパースの青山景昌など、男女共に多くの日本人が今季もプレー。NZダービーでは4人、ウエスタン・ユナイテッド対ウェリントン戦では5人の日本人選手が先発。隔世の感しきりだ」





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