高級ホテルの一角のサイケな空間/タカ植松のQLD百景 第41回

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ソフィテル・ブリスベン

 10数年前、まだ垢抜けない田舎都市だったブリスベン。その頃、高級ホテルというとヒルトンかソフィテルしかなかった記憶がある。まぁ、高級ホテルには縁遠い生活なので多分にバイアスが掛かっているかもしれない。それでも、たまに取材や待ち合わせがクライアントの宿泊先ロビーでなんてこともあって、どちらも一応ロビーとカフェテリアを利用したこともあり、全く未知の世界というわけでもないが。

 ヒルトンは、シティで一番にぎわうクィーン・ストリート・モール直結。かたや、ソフィテルはセントラル駅直結というのがそれぞれの売りだが、ソフィテルに泊まるような人は空港からはタクシーか専属運転手付きのリムジンなんかで乗り付けるだろうから、駅直結が誰にアピールするのかは甚だ疑問。

 シティの外れ、歓楽街のフォーティテュード・バレーに近いエリアでの野暮用の帰路、セントラル駅から電車に乗るためにソフィテルのロビーを横切り、連絡通路に歩を進めた。週末の午後9時ごろの不気味なくらいにシーンとした空間。場末感だけを強調するようなエスカレーターのハンド・レール周りを彩るネオン。この光景にも、すごく既視感があったが、今回は前回と違って、脳みその裏手の海馬の記憶を幾らかき回しても思い出せなかった。多分、この既視感はずいぶん前に同じこの通路とエスカレーターを通った時の記憶なのだろう。

 連絡通路を抜け、駅のコンコースにつながる階段を上がり切った時、もわっと押し寄せてきたいろんなものが混じった雑踏特有の臭いが鼻に付く。連絡通路の静ひつに包まれたサイケ空間は、高級ホテルと外界の中間に張られた結界なのだろう。 

 全くもってどうでもいい話だが、あながち間違っていないかも。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

文 タカ植松(植松久隆)
ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人

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