第8回:ついに日本のワーキング・ホリデー制度が改正
皆様、こんにちは。東京でオセアニア・ビザ・コンサルティング事業を運営している、AOMビザコンサルティング代表・足利弥生と申します。
新しい年を迎え、さまざまな計画や目標などを立て、この1年の過ごし方を検討している人も多いと思います。2025年は何といっても大阪・関西万博が4月から10月まで6カ月開催されるため、日本は海外からの観光客やビジネス客を多く迎えるにあたり、インバウンド・ビジネスが盛り上がっていると予測しています。そのような中、昨年末にワーキング・ホリデーについての大きなニュースが報道されました。
ワーキング・ホリデーは2カ国協定となり双方両国の同意に基づき、各国のワーキング・ホリデーが実施されています。その中で、現時点では以下8カ国が2度取得できるように改定されました(外務省ホームページより抜粋)。
・2024(令和6)年12月1日以降:5カ国(カナダ、英国、ニュージーランド、デンマーク及びオーストリア)については生涯2回若しくは2年連続、または、一生涯2回の参加が可能としました(国によって条件が一部異なります)
・2025(令和7)年1月1日以降:3カ国(ドイツ、アイルランド及びスロバキア)については一生涯2回の参加が可能としました(国によって条件が一部異なります)
日本では1980年に制度が施行され、40年以上経過して初めての改定となります。
昨今の日本へのインバウンド・ツーリズムの人気や日本へのビジネス、家族訪問者数を検討してもこの改定は非常に大きなインパクトとなると想定しており、長年オーストラリアのワーキング・ホリデー制度を実務者としてみてきた立場として、この改定は歓迎したい次第です。ただ、皆様もお気付きになられたかもしれませんが、今回の改定にはオーストラリアからのワーキング・ホリデーは含まれていません。
二カ国協定で最も歴史があり、かつオーストラリアへのワーキング・ホリデーが最多となる日本ですが、背景として、現在、オーストラリア国内でもワーキング・ホリデーについての多様な意見が提言されています。まずはオーストラリアにおけるワーキング・ホリデーの位置付けや今後の展開について、整理する必要があるため、このタイミングの改定には含まれなかったようです。
各国両国との関係や協定内容によっても条件が異なってくる制度になるため、まずは今回施行された8カ国を皮切りに、実際の運営において、どのような効果があるかという点を注目し、活用していくことが今後の日本のインバウンドカツーリズムにもおおいに有益になると感じています。
少なくとも、今回最も長く協定のあるカナダやニュージーランドが含まれており、ワーキング・ホリデー制度を熟知した国からの動向は興味深いものです。
オーストラリア・ワーキング・ホリデー制度をからみる経験を申し上げると、ワーキング・ホリデーで滞在する若者にとって最もシナジーのある職務や業界は観光業界です。オーストラリアやニュージーランドが1980年後半以降ハネムーン・ブームで観光客が急増した時代、多くの日本人ワーキング・ホリデーの人が観光業に従事し、ツアーガイドや旅行会社、そしておみやげ店など、日本語でのサービス提供により、更に多くの観光客を誘致したことは記憶にある好例です。こうしたトレンドを、日本もこの制度を活用することで戦略的に活用すれば、更に多くのインバウンド観光客を誘致できる要因となります。
観光業での最大のメリットは言語や文化の壁なく、その国の人びとが自国の方々を誘致したりサービスを提供したり、日本について紹介することです。特に英語圏ではない、ドイツやデンマークなど、こうした言語サービスを提供できる人が少ないため、観光業で生かすことが誘致へとつながり、観光業への盛り上がりにもつながります。
特に地方誘致への誘導として、ワーキング・ホリデーの若者は比較的多方面への旅行を好むため、こうした地方への外国人誘致という戦略に大いに活用できるでしょう。
何よりも、今年の万博を見据えてワーキング・ホリデーで来日し、なんらかの仕事に従事したいと考える若者は増加するのではないかと期待しています。これらの経験をすることで更に日本について知る機会となり、そして日本語を勉強する機会にもなります。
もう1つワーキング・ホリデー効果の大きな要因は、滞在しているワーキング・ホリデー・メーカーを訪ねて、自国から更なる観光客を呼び込むことが可能になるという点です。友人や家族が日本に滞在しているという安心感が旅行への関心を更に高め、国自体に対する興味を持つ大きなきっかけとなります
長期滞在者としての誘致という点は、日本は富裕層向けのビザとして最長1年滞在できるビザを広報していますが、制度とビザ取得の難易度を検討すれば、ワーキング・ホリデーの方が幅広い国籍を誘致でき、かつ若者のため、その後のリピーターになる可能性が格段に高いことが現実です。
観光業界では、これらの誘致による数値を「Visiting friends and relatives (VFR tourism / VFR travel)」として統計分析することが多く、この効果を生むような政策を日本もワーキング・ホリデー制度の改定をきっかけに戦略的に検討していくことで、確実に経済効果につながると予測しています。
オーストラリアは政府観光局が主に広報担当として、ワーキング・ホリデーによる訪問客や、経済効果、そしてVFRがどのくらいか、などの分析と実際の数値を提供することで、国における観光産業への経済の柱として位置付けています。
そのため、この法改正から次の期待としては日本へのワーキング・ホリデー広報です。制度があっても積極的な啓蒙活動なければ利用する人の増加にはつながりません。この点をぜひオーストラリアの歴史からも多く参考になる点はあると思いますので、日本が海外からのワーキング・ホリデーの若者でいっぱいになるような誘致戦略の検討を願います。
これらの効果はその後、日本のファンを増やし、日本語を勉強したい、そして日本のためにキャリアを構築したい、日本との架け橋になるような存在になりたいというようなモチベーションにも大きくつながるため、海外からの若者の誘致がどれだけ日本の将来に重要かという点をこの機会にぜひ検討して頂ければと思います。
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