史上最大数の日本人フットボーラーが集う今季のAリーグで主役を張る「三匹の侍」の存在感/日豪フットボール新時代 第151回

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1月末現在で3位と好調のWUDの屋台骨を支える“三匹の侍”(©️ウエスタン・ユナイテッドFC)

 開幕時点で男女計13人もの日本人選手がプレーする今季のAリーグ。1月の移籍期間には、12位に低迷するパース・グローリーが更に2人の元Jリーガーを獲得するなど日本人選手のニーズは高まるばかり。Aリーグの現行13クラブで日本人選手が所属したことのないクラブは、参入5年目のマッカーサーFCだけというのだから、Aリーグ20年の歴史を長く追っている身ながら驚きしきりだ。

 そんな今季の日本人の存在感向上の象徴が、メルボルン第3のチームとして、上記のマッカーサーFCと同じく20/21シーズンから参入したウェスタン・ユナイテッド(WUD)。3人の日本人男子選手の内、創設初年度から所属するチームのレジェンドで、今季からキャプテンも務めるDF今井智基については当稿でも既に取り上げた。

 ブリスベン・ロアからスコットランドを経て加入2年目のMF檀崎竜孔は、24歳ながら4季目のAリーグに父親になった責任感を胸に気迫あふれるプレーでピッチを駆け回る。今季、そんな2人のチームメイトとなったのがFW指宿洋史。前所属のアデレードでカルト的人気を集めていた指宿は、移籍直後から、その熱いプレー・スタイルでサポーターの気持ちを鷲掴み。若いチームの最前線にどっしりと構える長身FWは、既に7得点とリーグの得点王争いに加わる大活躍を見せている。

 1月10日のアウェーのメルボルン・ビクトリー戦。ロスタイムまでは3─2と劣勢も、ロスタイム早々に追いつくと、残り時間わずかで決勝点を叩き込んだのは指宿だった。頼れる大黒柱の指宿には、試合を通してチームメイトの思いが込もったパスやクロスが集まった。先制点の後は幾つかの決定機を逸していた指宿の劇的な決勝点をアシストしたのは檀崎だ。交代出場から間もなく、右サイドを得意のドリブルで持ち上がってのグラウンドの早いクロス。「イブさん、決めてください」の熱い思いが込められたクロスを指宿はしっかりとトラップしてから右足一閃、ゴールネットを揺らしたのだ。

 キャプテンの今井が「今季3度目のアディショナル─タイムでの逆転勝ちなんですよ」と教えてくれたように、今年のWUDは劇的な勝利が多い。好調のチームはリーグ4位に付けている(1月19日現在)。そんな今季の“WUD劇場”の主役を張るのが、上記3人の侍フットボーラーだ。筆者が密かに懐かしの時代劇になぞらえ”三匹の侍”と呼ぶ彼らには、もっと暴れてもらいたものだ。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター/コラムニスト。タカの呟き「思い返せば、本当に多くの日本人選手がAリーグでプレーしてきた。今季20年の長い期間での積み重ねだけに、とても感慨深い。そろそろ、かつてこの地でプレーした選手たちに往時を思い出しながら話してもらうような機会を作っていければ面白いと思うのだが、読者諸兄、興味はいかが」





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