日豪プレス・インターンシップ・プログラム取材記事③

シドニー中心部に位置するタウン・ホール駅から徒歩10分の場所にあるラーメン店「日月堂(NICHI GETSU DO)」。日本語が堪能なカーティス・シフエンテス(Curtis Cifuentes)さんが日月堂オーストラリア代表を務め、取材時には、日本から共同オーナーであり日月堂日本代表の小林宏明さんが訪れていた。全ては偶然の出会いから始まったという、彼らの関係性や、ラーメンへのこだわりなどについて、話を伺った。
(文・写真=田中悠斗、内野珠耶、小峰和斗、脇山彩)

カーティスさんと小林さんの絆は30年以上
オーストラリアでラーメン店を始めようと思ったきっかけと2人の出会い
1993年、小林さんがオーストラリアにワーキング・ホリデーで滞在していた際、シェア・ハウスのルームメイトがカーティスさんだった。その後も交友を続け、2人は30年来の友人だという。小林さんは2000年11月にビジネスを開始。2016年10月に日月堂1号店となる「味噌ラーメン専門店 日月堂 三郷店」をオープンし、その後、埼玉県を中心にラーメン店を17店舗を展開している。お互いの仕事について話していく中で、一緒に仕事をしたいと考え、シドニーにラーメン店をオープンすることに決めた。2人は金儲けのためだけではなく、信用できる人、大切にできる人と楽しく仕事をしたいと考えたという。小林さんは、「2人で3週間くらいかけてヨーロッパ中のラーメン屋を巡り、お腹いっぱいになりながら全てのラーメン屋をチェックしました。それがもう楽しくて。彼と心地良く長い時間を過ごしていられるから、一緒に仕事もできるというか、そういう信頼のもとに店を始めました。出会った当初は、共にビジネスをするなんて思ってもみませんでした」と笑顔で語る。
日月堂初の海外進出先をオーストラリアに決めたのは、オーストラリアには新しいスタイルのラーメンを広げるチャンスがあると考えたからだという2人。カーティスさんは、「近年、たくさんの外国人が日本を訪れてラーメンを食べ、すばらしい食べ物だと気付き、それぞれの国に帰国した後もまたラーメンを食べたくなるんです。オーストラリアにはたくさんのラーメン店があり、すばらしい店も多く、日本風の店もあります。シドニーで複数、店舗展開することに成功している店もあります。だから私たちはシドニーで高品質なラーメンを作れば、きっと人気が出ると思いました」と話す。
オーストラリアで開業するにあたって苦労した点
カーティスさんと小林さんはオーストラリアで店をオープンさせるにあたり、苦労が絶えなかったという。まずは、ラーメン店に適した理想のテナントを見つけなければならなかった。電車やバスなどの公共交通機関が利用しやすい場所に重点を置いて考えたそうだ。また、カーティスさんは、店舗運営のレベルを高めるために日本で研修を行うなど、経営に携わる勉強に励んだそうだ。時には日本で働いている日月堂のスタッフの力を借りたことも。更に、店の内装を日本風のデザインにしすぎないこと、食品サンプルを飾りたかったことなど、こだわりを持ったという。開店の目途が立った際、新型コロナウイルスの影響を受け、計画が崩れてしまったこともあった。しかし、それらの苦労を乗り越え、現在、お客さんから高い評価を受けたり、「おいしかった」と褒められたり、喜んで食べてもらうことがやりがいとなっているそうだ。
ラーメンへの思い
日月堂のラーメンやサービスのこだわり
彼らのこだわりとして、インタビュー中に繰り返し出てきた言葉は「一貫性」だった。日月堂では、お客さんを増やすために最も大切なのは「一貫した品質」だと考えているとカーティスさんと小林さんは口をそろえる。おいしいラーメンと質の高いサービスを提供し続けることこそが、店の価値を高めると信じているため、開店以来マーケティング活動は行っていない。何よりも「クオリティーが最も重要」であり、いつ訪れても同じ高品質のラーメンを提供できることを目指している。常に高品質、つまりカーティスさんと小林さんが思う「本物」のラーメンを提供することが彼らのモットーなのだ。
また、ラーメン業界にはさまざまなトレンドがあるが、小林さんは流行には関心がないと語る。トレンドに乗って商売をするのではなく、地域に根ざし、地元の人びとが「この店が近くにあったらいいな」と思うような店作りを大切にしているという。流行を追うのではなく、長く愛される店を目指しているのだ。
海外で日本のラーメンが高く評価される理由とは
日月堂は、日本品質の味とサービスを提供することが、海外での高評価につながると考えている。例えば、イタリアで本場のコーヒーを飲むとおいしいと感じるのと同じように、日本のラーメンを忠実に再現し、高品質のサービスを提供する店があれば、それは自然と評価されるものだという。2人は、シドニーにおいても、「本物」のラーメンを提供し続けることで、多くの人びとにその魅力を伝えていきたいと考えている。
こだわりのラーメンを実食

取材に訪れた際、4種類のラーメンを実食させて頂いた。オリジナル味噌ラーメン($19)は、太麺と味噌のスープが完璧にマッチし、スペシャル味噌ラーメン($27)は、味玉やチャーシューなどが豪華に乗った店主おすすめの一品だ。また、シドニー店限定で提供されている野菜がたっぷり入ったシイタケ塩ラーメン($24)も絶品で、ぜひこの季節に食べて欲しい夏季限定のざるラーメン($21)は、ひと口食べれば夏の暑さも吹き飛ばしてくれる。どれも店のこだわりが感じられる味でおいしかった。スープに使用しているこだわりの味噌は、独自にブレンドしたものを日本から仕入れているそうだ。また、器は日本で作られた物を使う徹底ぶりを見せ、そうした細部にもこだわりが感じられた。

取材を終えて
私は、これまでこのような取材をした経験がなく緊張したが、カーティスさんと小林さんが優しく接して下さったので緊張がほぐれ、とても良いインタビューをすることができた。そして、2人の出会いやオーストラリアで開業するために頑張ってきたことなど、たくさんすばらしい話を聞かせて頂き、とても強い絆を感じた。今回、私は日月堂のスペシャル味噌ラーメンを実食し、まるで日本で食べているような感じで、とてもおいしく頂いた。機会があれば、日本の店舗も訪れ、他のメニューも頂きたいと思った。今回は本当に貴重な体験をさせて頂き、ありがとうございました。
(田中悠斗)
今回の取材を終えて、2人がとても強いこだわりを持っているからこそ、日月堂の日本品質のラーメンが人気を集めているのだと感じた。一番印象深かったのは、お客さんがいつ来ても同じものを提供できるようクオリティーにこだわっていると話していたことだ。取材の日は、開店後すぐにたくさんのお客さんが来店しており、このこだわりがあるからこそ、さまざまな世代から人気を集めているのではないかと感じた。全てを日本の店舗と同じにするのではなく、日本式を残しつつ、オーストラリアに合った形で内装やメニューを変更している点にも人気の秘訣が感じられた。今後も日本品質のラーメンを食べられる店として更に人気を集めて欲しい。本当に貴重な経験をさせて頂き、ありがとうございました。
(内野珠耶)
カーティスさんと小林さんの話を聞いていく中で、偶然の出会いの重要性を実感し、そしてラーメンのクオリティーの高さに驚いた。彼らがもしシェアハウスを選択せず、出会っていなければ、日月堂シドニー店は誕生していなかった可能性もあるのだ。また、「本物を提供する」という彼らのポリシー通り、「海外でもこれほどおいしい日本品質のラーメンが食べれるのか!」という感動があった。ぜひ、「本物」のラーメンを食べに日月堂に足を運んでみて欲しい。
(小峰和斗)
今回の取材を通じて、日月堂は、カーティスさんと小林さんの深い信頼関係によって支えられていることが伝わってきた。2人の強い絆が、店の温かみのある雰囲気を生み出しているのだと感じた。また、単なる店舗経営にとどまらず、内装や食材、サービスの全てにおいて、日本品質のラーメンをシドニーで提供することへの強い情熱に感動した。2人の信念と熱意が、今後どのように日月堂を成長させていくのか、その後の展開に注視していきたい。シドニーで日本の味が恋しくなったら、ぜひ日月堂を訪れることをお勧めする。
(脇山彩)
日月堂(NICHI GETSU DO)
住所:2/355 Kent St., Sydney NSW 2000
営業時間:月~土11AM~2PM、5PM~9PM、日休
Tel:0419-876-712
Instagram:@nichigetsudo_aus
※同記事は、2月10日から2週間にわたり、日豪プレスのインターンシップ・プログラムに参加した東京経済大学の学生10人が取材しインタビューを行ったもので、下記より他の記事も確認できる。