日豪プレス・インターンシップ・プログラム取材記事①

日本製の弁当箱などを取り扱う「Majime Life」代表の中杉ケンリーさん。日本とシンガポールのハーフであり、1997年に大学進学を理由に来豪。その後日本で就職し、2020年に独立したという。現在、オンラインを中心に美しい日本の伝統模様と機能性に特化した弁当箱を販売している。個人でビジネスを展開するケンリーさんに、日豪プレスのインターン生として在籍した3人の大学生がインタビューを行った。会社設立の動機や商品のこだわりなど、話を伺った。
(文・写真=郡結衣、野崎佑馬、板本大空)

オーストラリアで日本の弁当箱を広める理由
──まず、社名の由来を教えて頂けますか。
「Majime(真面目)」は日本語で「真剣」という意味ですが、必ずしも真面目に生きることが幸せにつながるわけではありません。真面目に勉強し、就職し、一生懸命働いても、自分を見失ってしまうことがあるからです。だからこそ、「Majime Life」には、単に決められた道を進むのではなく、自分が本当にやりたいことに真剣に向き合い、主体的に人生を切り開くという思いが込められています。「何に対して真面目であるべきか」を問い、自分にとって本当に大切なことに全力を注ぐ——そんな逆説的なメッセージを持つ社名にしました。
──日本特有の商品が多くある中、なぜ弁当箱を販売しようと思ったのですか。
ビジネスを始める前に、たくさんリサーチをしました。「日本に関係する何かをやりたい」と思っていたので、日本のサービスや商品をいろいろ調べて、その中で弁当箱に注目しました。日本の弁当文化はユニークで、オーストラリアには専門的に取り扱っている店がほとんどなかったんです。もちろん、数個だけ弁当箱を扱っている店はありましたが、弁当箱専門店はなかったんです。だからこそ、ビジネス・チャンスがあると思い、この分野に決めました。今のところ、弁当箱がメインですが、それ以外にも箸や風呂敷も扱っています。特に風呂敷は人気です。オーストラリアには、日本の伝統的なデザインが好きな人がたくさんいます。風呂敷は、弁当箱を包むだけでなく、ギフトラッピングやインテリアとしても使えます。将来的には、日本の扇子や陶器なども取り扱いたいと考えています。


ケンリーさんの商品へのこだわりや考え方
──商品の柄や性能について何か工夫している点はありますか。
シンプルでありながら、上品でスタイリッシュなデザインを意識しています。オーストラリアの多くのお客様は日本のデザインが好きです。特に、日本の美的感覚や伝統的な柄が人気です。例えば、桜や紅葉などの模様、または落ち着いた色合いが好まれます。また、オーストラリアで売られているランチ・ボックスは大きくて、しっかりとした作りになっています。オーストラリアの食文化は日本と違います。日本の弁当はご飯や魚が中心で、コンパクトに詰められていますが、オーストラリアではサラダやパスタが多く、食材を分ける傾向があります。私は、日本のスタイルの弁当箱をもっと広めたいと考えています。おしゃれで、電子レンジや食洗機対応の便利なものを紹介したいのです。
──日本製にこだわる理由は何ですか?
それが私のビジネスのテーマだからです。私は可能な限り日本製の商品を取り扱いたいと考えています。そして販売している弁当箱に関しては、全て日本製です。なぜなら、日本の職人が手作業で仕上げる工程があり、高品質だからです。また、日本経済に貢献したいという思いもあります。

──購入者の反応を見て、商品に反映させていることはありますか。
ある程度はあります。基本的には大きな変更ではなく、多くの商品をそろえることで対応しています。お客様によって好みが違うので、一部の人が「これは好きじゃない」と言っても、他の人には人気があったりします。ただ、もし多くのお客様が「これは問題がある」と言った場合は、改善を検討します。しかし、今のところ「これは売れないからやめる」というような商品はほとんどありません。オンライン販売では、お客様の声を直接聞くのは難しいですが、市場やイベントでは直接話をして、意見を聞くことができます。また、販売後に商品レビューをもらうことで、フィードバックを得ることもできます。幸い、ほぼ100%のお客様が「品質が良い」「価格が適正」と満足してくださっています。

取材を終えて
インタビューを通じて、弁当文化がオーストラリアでも広がりつつあることを実感した。特に、ケンリーさんの「食を通じて人びとの生活に日本文化を伝えたい」という思いが伝わってきたのが印象的だった。また、今回の取材は私にとって初めての英語でのインタビューだったが、ケンリーさんが丁寧に話してくださったおかげで、スムーズに進めることができた。これから就職活動を行う私にとって、ビジネスに対する姿勢やキャリアの考え方は大いに参考になり、学びの多い貴重な経験となった。
(郡結衣)
今回のインタビューを通してケンリーさんの仕事への向き合い方と日本製へのこだわりに強く衝撃を受けた。日本の職人技や、品質を伝えたいという考えもすばらしく、更に日本経済にも貢献したいという考えには深く感動した。デザインや、機能性にも凝っていて我々日本人でも欲しくなってしまう商品ばかりだった。また、1人で経営しているということで初期費用や人件費削減などの工夫があって手軽な価格となっていた。今回はケンリーさんに親切に対応して頂いたため、納得のいく記事ができた。そして自分にとってとても貴重な体験となった。
(野崎佑馬)
インタビューを通じて、弁当文化がオーストラリアでも広まっていることを実感し、ライフスタイルや食習慣の違いを考慮することが重要だと気付いた。特に印象的だったのは、「お客さんの声に寄り添っている」という点である。購入者の好みはそれぞれ異なるにもかかわらず、Majime Lifeが高い評価を受けているのは、お客様を第一に考えるケンリーさんの努力の賜物だと感じた。オーストラリアでも弁当文化が更に広まり、ランチ・タイムがより楽しいものになればと願う。
(板本大空)
Majime Life
Email: contact@majimelife.com.au
Web: www.majimelife.com.au
Instagram: @majime_life
Facebook: www.facebook.com/majimelife
※同記事は、2月10日から2週間にわたり、日豪プレスのインターンシップ・プログラムに参加した東京経済大学の学生10人が取材しインタビューを行ったもので、下記より他の記事も確認できる。