シドニーに日本式のかき氷専門店がオープン!日本の涼を感じさせる「Kakigōri Kaiji」の挑戦

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日豪プレス・インターンシップ・プログラム取材記事②
人気メニューのUji-kintoki + Sweet Milk $26

 シドニーの中心部のサセックス・ストリート(Sussex St.)とゴールバーン・ストリート(Goulburn St.)の交差点付近、トラムのチャイナタウン駅から徒歩約3分の場所に、シドニー初の日本スタイルのかき氷店「Kakigōri Kaiji」がある。同店のオーナー若槻美帆さんに、オープンに至った経緯やこだわりについて、話を伺った。
(文・写真=寺谷瑞菜、岸巧磨、髙橋優)

シドニーでかき氷を広めたい―Kakigōri Kaiji誕生の背景

シンプルな内装にこだわったというおしゃれな店内

 美帆さんは京都出身のアメリカ育ち。保育の勉強のために来豪してシドニーに滞在し、旦那さんに出会い、現在3人のお子さんを育てながら、旦那さんと共にかき氷専門店をオープンさせた。

──シドニーにかき氷専門店をオープンしたきっかけと、店名の由来について教えてください。

 Kakigōri Kaijiが誕生したのは、夫が「シドニーにはない新しいことに挑戦したい」と考えたことがきっかけです。シドニーにはないものを提供したくて辿り着いたのがかき氷でした。開店準備の際、メルボルンにある有名なかき氷店とご縁がありました。かき氷の魅力を広めたいという共通の思いがあり、彼らの協力を得て2024年6月に「Kakigōri Kaiji」をオープンするに至りました。

 店名は、私たちの末っ子「Kaiji」の名前から取りました。「Kaiji」と「Kakigori」の頭文字が同じで、響きが良かったことが理由の1つです。家族の名前を付けることで、より特別な意味を持つ店名になりました。この店を通じて、日本のかき氷文化をシドニーの人びとに楽しんでもらいたいと思っています。

サセックス・ストリートに佇む「Kakigōri Kaiji」

かき氷に使われている氷についてお聞かせください。

 当店は日本で最も歴史のある製氷会社の1つ、金沢の「クラモトアイス」を使用しています。クラモトアイスは100年以上の歴史を持ち、ピュアで不純物が一切ありません。この氷を使うことで、ふわふわで溶けにくい、理想的なかき氷を提供することができます。

 オープン前は、シドニーで手に入るブロック氷も試しましたが、水質が違うため、私たちが求めるふわふわの食感を再現することができませんでした。氷が溶けるスピードやシロップとのなじみ方も、シドニーの氷では理想の仕上がりにはなりませんでした。

 そこで、メルボルンのかき氷店のオーナーに相談したところ、彼らはクラモトアイスを使用していることが分かりました。日本から直接輸入するとコストや手間が掛かるため、彼らのルートを活用して仕入れることができたのは幸運でした。オーナーとの出会いも含めた運命により、シドニーでも日本のかき氷を再現することが可能になりました。

 日本の伝統的な氷にこだわることで、シドニーの皆様にも最高のかき氷を提供したい、その思いを大切に私たちは日々氷と向き合っています。

かき氷には、透明度の高いクラモトアイスを使用

提供するメニューへのこだわり

Strawberry+Milk Foam$23(左)とスタッフお勧めのHazelnut+Café au lait$26(右)

──それぞれのメニューにはどのようなこだわりがありますか。

 できるだけ多くの人が楽しめるように、バラエティー豊かなメニューをそろえています。乳製品不使用にも対応しており、より幅広いお客様にかき氷を楽しんで頂けると思います。特に「日本らしさ」を大切にしたく、日本と言えば抹茶を思い浮かべる人が多いので、抹茶を使ったかき氷はメニューに欠かせません。

──材料はどのように選んでいますか。

 「サクサク」「もちもち」「フワフワ」など、食感の違いを楽しみながら食べられるメニューを考案しています。新鮮な食材を使い、月ごとに期間限定メニューも作っています。時期によって旬の食材を取り入れ、現在はマンゴーを使ったメニューを販売しています。

──店にはどのようなお客様が訪れますか。

 最近は日本のお客様も増えましたが、やはり現地の人が多いです。韓国やタイからのお客様もたくさん来ます。韓国には韓国の、タイにはタイのかき氷があるので、かき氷自体はなんとなく知ってくださっています。しかし、日本のかき氷は全然違うので、それに興味を持って来てくださっています。Kakigōri Kaijiはシドニー初のかき氷専門店ということもあり、多くの人に来て頂いています。

──特に印象に残っているお客様とのエピソードがあれば、教えてください。

 かき氷を見たことがない人は、すごく感動してくださいます。氷を削る様子を真剣に眺めたり、写真を撮ったりして、「日本でも絶対に食べたい!」と言ってくださる人がたくさんいます。

かき氷だけでなくドリンク・メニューも豊富なKakigōri Kaiji。日本人スタッフ(左)と美帆さん(右)

 美帆さんに、日豪プレスの読者やこれから訪れるであろうお客様に向けてメッセージをお願いすると「皆様がかき氷を気に入ってリピーターになってくれると願っています!」と笑顔で答えてくれた。同店のスタッフの多くは日本人で、J-POPが流れる店内では日本を感じることができる。スタッフの採用にあたっては、日本人のワーキング・ホリデーの方々を積極的に採用しているという美帆さんは、「ワーホリの子に楽しんでもらいたい」と語り、「かき氷を作ることは意外と難しいため、何より重要視しているのは『器用さ』です」と続けた。

 季節に合ったさまざまなメニューを取りそろえた、日本を感じられるかき氷専門店Kakigōri Kaijiに足を運んでみてはいかがだろう。

取材を終えて

 インタビューを通じて、日本文化を海外に広めることに挑戦している美帆さんの姿に深く感動した。シドニーでかき氷専門店を開くまでの道のりにはさまざまな挑戦があり、困難にも負けず、「日本のかき氷を提供したい」という強い思いと、戦う姿はとてもかっこよかった。現地の人びとになじみのないかき氷が、「日本の味」として受け入れられ、より広まっていくことに期待する。また、自分も日本の文化を広げる手助けになるようなことができれば良いなと思った。
(寺谷瑞菜)

 取材させて頂いた美帆さんの話を聞いていると氷やシロップをはじめ、「外せないこだわり」が随所に見られ、Kakigōri Kaijiの人気の理由が伺えた。日本の定番のかき氷やドリンクもあり、「Strawberry matcha latte」など独自の商品を作り出したことや、商品や店内の雰囲気も「日本風」ではなく「日本を感じられるもの」になっており地元の人はもちろん、日本人からの人気も高まってきたていることにもうなずける。
(岸巧磨)

 取材を通して、Kakigōri Kaijiは特に「日本らしさ」を大切にしていることが感じられた。金沢の老舗製氷メーカーのクラモトアイスを使っていたり、お皿のデザインに折り紙が使われていたりと、細部へのこだわりも知れて良かった。宇治金時かき氷を頂いた際、氷のふわふわ感と小豆のとろとろ感にシロップが絡まり、食感を楽しみながらおいしく食べることができた。また、スタッフが氷を削っている様子に、お客さんが釘付けになっているという話から、日本の文化を通して、つながりが生まれていくことはとても素敵なことだと感じた。
(髙橋優)

Kakigōri Kaiji

住所:394 Sussex St., Sydney NSW 2000
営業時間:月~木3PM~10PM/金~日1PM~10PM
Web: https://www.kakigorikaiji.com.au/
Instagram: @kakigorikaiji

※同記事は、2月10日から2週間にわたり、日豪プレスのインターンシップ・プログラムに参加した東京経済大学の学生10人が取材しインタビューを行ったもので、下記より他の記事も確認できる。





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