「コリオリの力」で進行方向左側の力が増幅
サイクロン「アルフレッド」が8日、オーストラリア・クイーンズランド州南東部のブリスベンからゴールドコーストにかけてのエリアに上陸する。サイクロンは日本の台風とどう違うのか。疑問に答えた。
「サイクロンQ&A ①今回の「アルフレッド」はなぜ危険なの?」より続く。

Q:公共放送ABC(電子版)によると、7日午後の時点で、ニューサウスウェールズ州北東部ではすでに3万8,000世帯以上で停電となり、1万9,000人に避難勧告が出ています。中心から離れているところでも影響が出ているのはなぜ?
A:アルフレッドに限らずサイクロンは中心付近だけではなく、針路に向かって左側の前方で、風や雨が強まります。今回は西に進んでいるので、影響がより大きいのは中心の北側よりも南側、つまりニューサウスウェールズ州側になります。日本の気象衛星「ひまわり8号」の画像(上記)を見ると、サイクロン本体の雲は、中心の北側で薄いですが、南側でははるか遠方のニューサウスウェールズ州東部までかかっています。
地球の自転による「コリオリの力」という力が作用するため、南半球のサイクロンの渦は、時計回りに回転しています。長くなるので詳しい説明は省きますが、興味がある人はググってください。要は、低気圧に吹き込む風が時計周りに吹くため、左側(今回の場合は南側)では回転方向と進行方向が重なることから力が増幅され、風が強くなります。一方、右側(北側)は回転方向と進行方向の力が相殺されるため、風が弱くなるのです。
これは、北半球の台風が反時計回りに渦を巻き、進行方向の右側で雨風が強まるのと正反対の現象です。
こうしたメカニズムから、中心付近のブリスベンからゴールドコーストにかけての都市圏だけではなく、進行方向の左側(南側)に当たるニューサウスウェールズ州北東部の広い地域でも、河川の氾濫や大規模な洪水、高潮による冠水などの被害が心配されているのです。
Q:シドニーでサーフィンするのは安全ですか?
A:影響が直接及ばない南方の地域でも、高波には警戒が必要です。サイクロンの中心から約730キロ離れたシドニー市内は、7日夜の時点で晴れています。サイクロンの直接の雲はかかっておらず、強風や大雨も届いていません。
しかし、外洋に面したビーチでは、サイクロンから最大で大人の背丈の2倍以上の高さがある巨大なうねりが打ち寄せています。すでにクイーンズランド州南東部からシドニーまでの海岸線では、すべてのビーチが閉鎖され、海水浴が禁止されています。
オーストラリアでは、ビーチが閉鎖されてもサーフィンは社会通念上、自己責任で容認されています。ただ、たとえコンディションが良くても、サイクロンの大波に乗ることができるのは、特別な訓練を受けたエキスパートだけです。入水はきわめて危険な行為です。高い場所からビッグウェーブ見物を楽しんでください。
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