ブリスベン国際空港

ブリスベンはブリスベーンだった。
そんなことを書くと、若者には「ちょっと何を言っているのか分からない」と言われてしまうだろうが、ブリスベンがブリスベーンだったのは紛れもない事実で、その証拠が今回の写真。
ブリスベン国際空港国内線ターミナルの手荷物受取のターン・テーブル(英語ではcarousel=カルーセル)の内側にひっそりと残っているサイン。カルーセルと聞けばカルーセル麻紀さんの顔がチラつくような昭和世代は、豪州にやって来てはこのサインのお出迎えを受けてきた。
かつて、外務省がそう定めたことで、実状とかけ離れていてもまかり通る変なカタカナ表記は少なくなかった。”ブリスベーン”もその最たる例。この街の人間の誰1人として、ブリス”ベーン”などと発音しないのに、なぜか”ブリスベーン”。マスコミ全体の表記に大きな影響力を持つ共同通信がまとめた統一表記も、外務省表記準拠の形でブリスベーン。筆者も、記事執筆時に”ブリスベン”と書いては、勝手に直される経験は何度もした。編集担当にどうか”ブリスベン”表記にしてくれと懇願してみても、にべもなかった。
そんなある日、思い付きで、署名サイトで「ブリスベーン表記の是正を共同通信に要望する」署名を募ってみた。結局、何筆集めたのかも覚えてないし、どの程度彼らの方針転換に影響与えたのかも分からないが、署名活動後しばらく経ってから突然、共同通信の表記が変わった。その後、ブリスベーンは一気に衰退していった。
蛇足だが、この看板よく見ると、下にうっすら”オーストラリアン航空”と書いてあったことに気付く。これまた懐かしいのだが、今回はあまり深堀りせずに置こう。とにもかくにも、ブリスベンはブリスベーンだったという本当のお話。

植松久隆(タカ植松)
文 タカ植松(植松久隆)
ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人