天然ガス輸出偏重、供給不足と高騰招く
5月3日投票のオーストラリア連邦選挙では、主な争点にエネルギー問題が浮上している。電気・ガス料金が高騰して「エネルギー危機」と言われる状況になっているからだ。オーストラリアは世界屈指の資源大国なのに、なぜこんなことになったのか?
「①資源大国オーストラリアで「エネルギー危機」のなぜ? 再エネ重視で石炭需要減」から続く

オーストラリアは米国に次ぐ世界第2位の液化天然ガス(LNG)輸出国だ。オーストラリア産天然ガスは、人口約2,700万人と国内市場が比較的小規模であることもあり、日本や韓国など海外向け長期契約を主眼に開発し、増産してきた。化石燃料であることには変わりないが、石炭や原油に比べると温室効果ガス排出量が比較的少ないというメリットがある。
国内最大の天然ガス生産拠点は、西オーストラリア州や北部準州の沖に点在する海底ガス田だ。気体のガスを極低温で冷やして液体にして体積を減らし、専用のLNGタンカーで輸出する。
これらの大陸北部から人口が集中する東海岸までは直線距離でおおむね4,000キロと遠い。パイプラインを新たに建設して気体で輸送するのは莫大なコストがかかり非現実的であるため、西オーストラリア州内で少量を消費するほかは、ほぼLNG輸出に特化している。
業界団体のオーストラリア・エネルギー生産者協会によると、西オーストラリア州の2023年の天然ガス生産量は2,884bcf(1bcfは10億立法フィート)あり、2,512bcfをLNGとして輸出した(表参照)。同じく北部準州も生産量505bcfのうち441bcfをLNGとして輸出した。
東部産は主要都市圏に供給可能だが
一方、北東部クイーンズランド州で生産される天然ガスは、比較的近い東海岸の大都市に既存のパイプライン網で供給できる。しかし、LNG輸出を前提に液化施設や港湾インフラが開発され、高い国際価格が魅力的であることから海外への供給を優先してきた。
クイーンズランド州産の天然ガスの大半は、石炭層から抽出される「コールシームガス」(CSG=石炭層ガス)。頁岩から採れる「シェールガス」と同様、近年の技術革新によって採掘できるようになった「非在来型ガス」の一種だ。同州産の石炭層ガスも23年の生産量1,421bcfに対し、LNG輸出量は1,217bcfと大半を占めている。
このように、オーストラリアでは国内で天然ガスが豊富に採れるにもかかわらず、特に国内供給も可能なクイーンズランド産の供給先が輸出市場に偏っている。このため、国内の事業者や家庭向けのガスの供給不足と価格高騰を招いてきた。
「③資源大国オーストラリアでエネルギー危機のなぜ? 「再エネ偏重が高騰招いた」と野党」に続く
■ソース