少数与党になれば脱炭素派に勢い
5月3日投票のオーストラリア連邦選挙では、主な争点にエネルギー問題が浮上している。電気・ガス料金が高騰して「エネルギー危機」と言われる状況になっているからだ。オーストラリアは世界屈指の資源大国なのに、なぜこんなことになったのか?
「②資源大国オーストラリアでエネルギー危機のなぜ? 世界2位のLNG輸出国なのに…」から続く

温室効果ガス削減策が争われた2022年の前回選挙から一転して、今回の選挙戦では生活コスト高騰対策とエネルギー問題が争点となっている。最大野党の保守連合(中道右派)は選挙戦で、労働党政権の再エネ偏重の政策がエネルギー料金の高騰を招いたと批判。天然ガスの活用や将来の原発導入を含む「バランスの取れたエネルギー・ミックス」が必要だと訴えている。
当面の対策として保守連合は、輸出が主体のクイーンズランド州産天然ガスを東海岸の需要地に振り向ける奨励策を打ち出し、ガス料金を引き下げると公約した。長期計画としては、運転時に温室効果ガスを発生しない原発を解禁し、国内7カ所に建設することを掲げている。
これに対し、与党労働党(中道左派)は引き続き再生可能エネルギー開発を推進し、2030年までに電力の82%を再エネ由来とする計画だ。脱炭素を政策大綱「フューチャー・メイド・イン・オーストラリア」の産業振興策の要と位置付ける。選挙戦では、保守連合の原発解禁は6,000億豪ドルの浪費だとして、ネガティブ・キャンペーンを展開している。
一方、左派の環境保護政党「グリーンズ」(緑の党)や、保守系ながら脱炭素に積極的な無所属グループ「ティール」は、資源業界にも配慮する労働党の環境保護政策は手緩いと批判し、より強力な温室効果ガス削減策を訴えている。ティールは2022年の前回選挙で躍進した。ただ、再エネ実業家であるサイモン・ホームズ・ア・コート氏の気候変動ファンド「クライメット200」から資金援助を受けている。
いずれにせよ、今回の選挙の結果、労働党が過半数を割って第一党を維持した場合、これらの少数勢力が議会運営のキャスティング・ボートを握り、政策がさらに脱炭素や再エネへ傾斜する可能性がある。
■ソース
A Cheaper, Cleaner, And More Consistent Energy Plan For Australia(Liberal Party of Australia)