QLD州では2025年8月1日から「Property Law Act 2023」が全面施行されます。約50年ぶりの大改正で、透明性の向上や契約過程の明確化を目指すもので、これによりNSW州やVIC州と足並みをそろえていくことになります。
従来の制度では、「買主が購入する不動産について自分で調べるのが基本」「売主の情報提供義務は最低限」といった立場でしたが、8月1日からは「売主に十分な説明責任を課す」という方向に180度転換されます。
売主の開示義務
・居住用・商業用不動産の売却時には、売主は購入契約締結前に正確な最新の法定書類を開示する必要があります。
・必要書類一例:
─登記簿・測量図
─建築・環境関係の通知や命令書(例:Building Act、EPA下の工事命令など)
─汚染土地や環境管理台帳への登録情報
─隣地境界線や木に関する紛争関係の申し立て状況
─共同所有(ストラータ)物件の場合、ボディ・コーポレート証明書や管理規約
─プール安全証明書(該当する場合)
売主が期限通りに適切な開示を怠ったり、虚偽・重大な欠落があった場合、買主は決済前であればいつでも契約解除可能となります 。
リース契約(テナント向け)における手続きの改善
・テナントによるリース譲渡、改修、担保設定、利用用途変更などの際は、「Proposal Notice」で申請し、貸主は1カ月以内に理由付きで「Decision Notice」を発行する必要があります。
・不合理な拒否・通知欠如があれば、テナントは裁判所に判断を求めることができます。
私道・地役権(Easements)などの条項に対する後方効力付与
地役権の維持、改善、保険や税負担などに関する責任が所有権移転後も継続して効力を持つようになります。
8月1日以降、不動産売却を検討する場合、速やかに専門家に相談すると共に、早いタイミングで開示書類の準備をする必要があります。開示書類の準備には時間が掛かるものもありますので、売主は計画的に進めていくようにしましょう。
アドバイザー

清水 英樹
オーストラリアQLD州弁護士。在豪30年以上。地元大学卒業後、弁護士資格を取得。フェニックス・グループCEOとして傘下にあたる「フェニックス法律事務所」、ビザ移民コンサルティング「Goオーストラリア・ビザ・コンサルタント」、交通事故ならびに労災を専門に扱う「Injury & Accident Lawyers」を経営
