
昔から、空の写真をよく撮る。幼い娘に「ダディは空の写真ばっかり撮るね」とよく言われたものだ。この街に生まれ育った彼女には特別なものには思えなくても、遠い異国の空を見上げて育った父には、ブリスベンの亜熱帯の空とそれを彩る雲や夕陽は格好の観察対象だった。
先日、そんな空と雲が好きな私だけではなく、それこそ、カメラ付きのスマホを持っている人のほとんどが空を見上げ、その様子をカメラに収めたであろう日があった。
8月1日、ブリスベンとその近郊地域の空を珍しい形の雲が覆った。学術的には層積雲という名の雲は、俗には畝雲(うねぐも)とも呼ばれるが、確かに畑の畝のように雲が切れ目なく空を覆い、この呼び方が一番しっくり来る。今回のようにぎっしりと奇麗に並ぶのはなかなか見られないだけに、多くのローカル、そして、ブリスベン近郊地域に住む邦人全体の約87%(筆者推定)がその空を写真に収めたはず(笑)。
かく言う自分は、車から荷物を持って降り「あ、何、雲すごくね?」とすぐに気付いたものの両手がふさがっていてカメラを取り出せずじまい。それでもグローサーリーを両手にぶら下げながら、慢性の首痛も忘れてしばし見上げた。1日を忙しく過ごし、「あ!」と思って屋外に走るも時既に遅し。雲は切れて日が暮れかかっていた。
そこで撮り損ねた雲の写真をSNSで募ってみたところ、都合30枚ほどの写真がブリスベン、ゴールドコースト、イプスウィッチなど広範囲から集まった。そんな皆さんの好意から1枚だけ選ぶなんて……ということで、今回の写真は、在SEQ(サウス・イースト・クイーンズランド)の同胞FB友、スレッズ民の皆さんから頂いた写真のコラージュで。
ご協力頂いた皆様、どうもありがとうございました。
春近し 空を埋めたる雲の畝
首の痛みも忘れ見上ぐる

植松久隆(タカ植松)
ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人