
シドニーのサリー・ヒルズにある「Golden Age Cinema & Bar」で9月2日、「Hoshino Resorts Press Event Sydney 2025」が開催された。会場にはメディア関係者や旅行会社など、多くの参加者が来場し、星野リゾートのCEOである星野佳路氏が登壇した。星野リゾートは1914年、温泉旅館として長野•軽井沢で創業。星野氏はその4代目で、1991年に事業を引き継ぎ、現在は「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」「LUCY」など、伝統的な温泉旅館から都市型観光ホテルまで幅広いブランドを展開。国内外に70の宿泊施設がある。
(取材・文=櫻木恵理)
星野氏の「私は年に80日スキーをします。つい先日もニュージーランドで3週間ほど滑ってきました」というユーモラスな自己紹介から始まり、ホテルの歴史や概要、オーストラリア旅行者への取り組みについて説明した。星野リゾートには、国内外の旅行者のニーズに合わせた6つのホテル・ブランドがあり、例えば日本の伝統的温泉旅館「界」、都市型観光に特化した「OMO」、そして今年新しく立ち上げられた山のホテル「LUCY」など、比較的小規模な宿泊施設を全国各地で展開している。

オーストラリアからの日本訪問旅行者は年々増加しており、2024年には約92万人に達した。25年には20%増加し、100万人を突破する見込みだという。星野リゾートのホテル利用者も新型コロナウイルスの影響からいち早く回復。特に温泉旅館ブランド「界」では、伝統的な体験を守りながらも、ベジタリアン対応の懐石料理や洋朝食を導入するなど、訪日旅行者に配慮した取り組みを進めている。星野氏は「オーストラリア人は真冬でも短パンを履くので、丈の短い浴衣を用意したらどうか」「コアラやカンガルーがいた方がいいか」とジョークを交え、会場を和ませた。

イベントの後半には、グローバル・マーケティング担当者が登壇し、今後の新規開業計画を紹介した。箱根や草津の温泉旅館、9月に尾瀬国立公園に誕生した新ブランド「LUCY」に加え、横浜、奈良、宮島、下関など、今後3年間で15軒のホテルを展開させるという。特に注目なのは、26年の春、奈良にオープン予定の重要文化財の旧刑務所を改装したラグジュアリー・ホテル「星のや」である。また、25年12月にオープンを予定している下関の港湾エリアのホテルは、単なる宿泊施設にとどまらず、市の大規模な港湾再開発マスター・プランの一部として位置付けられている。下関市の関係者や設計者らは、シドニーの事例を参考にするため実際に現地を訪問したそうだ。
最後の質疑応答では、「初めて日本に訪れるオーストラリア人にお勧めのルートは?」という質問に対し、星野氏は「東京から箱根、京都をめぐるゴールデン・ルートがお勧め」と答えた。ほかにも、スキー・リゾートを訪れるオーストラリア人の年齢層やベビーシッター・サービスの有無といった具体的な質問が寄せられ、星野氏はタトゥーを入れた旅行者でも温泉やプールを利用できることにも触れた。
イベント後にはネットワーキングの時間が設けられ、参加者は星野氏やスタッフと直接交流する貴重な機会を得た。さらに抽選会では宿泊券が用意され、会場は最後まで大いに盛り上がった。
今回のイベントを通じ、星野リゾートがいかに伝統を大切にしつつ、オーストラリア市場を重視しているかが伝わってきた。温泉利用の際のタトゥー容認やベジタリアン対応の料理など、外国人旅行者への配慮も印象的だ。日本への一時帰国や旅行を計画している在豪者にとって、星野リゾートはますます魅力的な選択肢となりそうだ。