【新連載】南半球は花粉症シーズン到来?「Hayfever」と薬の使い方/知って安心!オーストラリアの薬事情①

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 こんにちは。シドニーで薬剤師として活動している鐵池めぐみです。これまで20年以上、大学病院でがん治療専門の薬剤師として勤務してきました。現在は薬局を中心に、日常生活で役立つ薬の相談を日本語・英語で行っています。同コラムでは、在豪の皆さんに役立つ「正しく安心できる薬の知識」をお届けします。第1回目は、春に増える「花粉症 (hayfever)」と、オーストラリアで市販されている薬についてお話しします。

「Hayfever」とは?

 特にシドニーの春(9月頃から夏に掛けて)は、街路樹が花を咲かせる心地よい季節ですが、同時にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみに悩む人も増えます。オーストラリアでは「ヘイフィーバー(hayfever)」という言葉が一般的で、アレルギー性鼻炎のことを指します。街路樹として広く植えられているプラタナス(London Plane Tree)の花粉が主な原因で、風が強い日には道路沿いに花粉や花の残骸が積もることもあります。

 プラタナスは花粉症やアレルギーを起こしやすい植物とされ、近年では街路樹が徐々にユーカリなど他の木に植え替えられる動きがあります。鼻の症状だけでなく、喘息発作の引き金になることもあり、注意が必要です。オーストラリア全体では、杉や芝の花粉、ハウスダスト、ペットの毛なども原因となるため、春だけでなく1年を通して症状に悩む人もいます。

飲み薬(抗ヒスタミン薬)

 抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水、目のかゆみに効果がある、身近なお薬です。同じ成分でも複数の商品名があり、店舗によって取り扱いが異なることがあるため、購入時には成分名で確認すると安心です。抗ヒスタミン薬の薬効にさほど差はありませんが、1つのものがあまり効かなくても他のものを試してみると効く場合があるので、試してみると良いでしょう。注意点は、同時に複数の薬を飲まないことです。また、薬によってはシロップやチュアブル錠もあるため、飲みやすさを考慮して選ぶのもおすすめです。

Bilastine(日本での参考商品名:ビラノア):1日1回、空腹時に服用する必要あり。
Cetirizine(日本での参考商品名:ジルテック):1日1回、錠剤に加え、錠剤を飲み込めない人や小児用にシロップやチュアブル錠もある。2歳児から服用可能。人によっては眠気を訴える場合もあるので注意。
Desloratadine(日本での参考商品名:デザレックス):1日1回、loratadineの改良版。錠剤に加えシロップもある。
Fexofenadine(日本での参考商品名:アレグラ):1日1~2回、錠剤に加えシロップもある。6カ月以上の小児も使用可。
Loratadine(日本での参考商品名:クラリチン):1日1回、錠剤に加え、錠剤を飲み込めない人や小児用にシロップやチュアブル錠もある。

※括弧内は日本での使用経験に基づく参考商品名(オーストラリアの商品名とは異なる場合があるので、成分名を必ずチェックしてください)

 これらは全て第2世代抗ヒスタミン薬で、眠気が少なく日常生活や運転中でも使いやすく、オーストラリアでは市販薬の主流です。第1世代抗ヒスタミン薬は眠気が出やすいため、運転や集中力を要する作業中には注意が必要です。

鼻スプレー(点鼻薬)

 以下に、手軽な点鼻薬を紹介します。括弧内はオーストラリアでの主な商品名を示しています。

・ステロイド点鼻薬の例:
mometasone(Nasonex®)、budesonide(Rhinocort®)、beclomethasone(Beconase®))は、中等度~重度のアレルギー性鼻炎の基本治療です。毎日使うことでくしゃみや鼻水、鼻づまりの症状をしっかり抑え、内服薬と併用するとさらに効果的です。全身への影響は少なく、副作用も起こりにくいのが特徴です。正しい使い方をしないと十分な効果が得られないので注意しましょう。

・血管収縮剤入り点鼻薬の例:
oxymetazoline(Sudafed®、Demazine®など)、xylometazoline(Otrivin®)は、風邪の治療薬としても使われ、鼻づまりの一時的な緩和に使われます。長期で使用すると鼻づまりが悪化することがあるため、4~5日以上は使わないようにしましょう。

新薬Dymista®は、抗ヒスタミン薬(azelastine)とステロイド(fluticasone)が一緒になった点鼻薬です。使用後約5分で効果が現れ、くしゃみ・鼻水・かゆみ・鼻づまりを速く、長く抑えます。中等度~重度のアレルギー性鼻炎におすすめです。

目薬(点眼薬)

 目のかゆみや充血には抗アレルギー成分入りの点眼薬が便利です。市販薬で購入できますが、症状が強い場合は眼科の受診をおすすめします。

受診が必要な場合・注意点

 下記の場合は受診が必要です。

・市販薬で症状が改善しない
・咳や喘息のような症状がある
・妊娠・授乳中、持病や他の薬を使用中

 迷った時は薬剤師やGP(かかりつけ医)に相談してください。

最後に

 シドニーのhayfeverは1年を通して症状が出ることもあります。オーストラリアの薬局で買える薬の種類や使い方を知っておくと、日常生活で安心して対策できます。迷ったら薬剤師やGPに相談しましょう。

Profile

鐵池めぐみ(カナイケメグミ)
薬剤師。シドニー大学薬学部卒業後、オーストラリア薬剤師国家資格を取得。シドニー及び南オーストラリア州の大学病院で、がん治療を中心とした臨床薬学に20年以上従事。現在は、がん治療の研究に携わる傍ら、薬局を拠点に英語と日本語で薬の相談や服薬支援を行っている。
Email: megkanaike@gmail.com





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