8〜12歳の普及率すでに84%

オーストラリア連邦政府は10日、16歳未満の子どもがソーシャルメディア(SNS)のアカウントを持つことを禁止する法律を施行した。「世界初」とされる新法は、社会問題化している「ネットいじめ」や依存症、ルッキズムといった悪影響から、子どもたちを守るのが目的だ。しかし、ソーシャルメディアは現代のコミュニケーション手段や社会参加の方法として、既に子どもたちに幅広く浸透している。大人が禁止したからといって、みんな簡単に止めるのか。抜け道はないのか。
*注:SNSは日本独自の和製英語であり、オーストラリアなど英語圏での正しい呼称は「ソーシャルメディア」。「SNS」と言っても通じないばかりか、発音が似ている「SMS」(ショートメッセージサービス=テキストメッセージ)と勘違いされる可能性が高い。
ざっくりどんな内容なの?
法律の正式名称は「2024年オンライン安全改正法(ソーシャルメディア最低年齢)」。16歳未満(15歳以下)の子どもを対象に、フェイスブック、インスタグラム、X(旧ツイッター)、ティックトック、ユーチューブなど10のサービスで、アカウントを持つことを禁じている。
違反した子どもや見逃した親に罰則はない。法的拘束力は、ソーシャルメディアを運営するプラットフォーム企業にある。年齢確認や違反したアカウントの停止など「合理的な措置」を怠った場合、運営企業は最大4,950万豪ドル(約51億2,500万円)の罰金支払い義務を負う。
ただ、フェイスブックやインスタグラムを運営する米メタ、ユーチューブを運営する米グーグルといった世界規模の巨大企業にしてみれば、たいした金額ではないとも言える。
子どもはほぼ全員使っているよ
大多数の大人は、子どものSNS禁止を賛成している。昨年11月に実施された民間世論調査「ユーガブ」によると、法案の支持率は77%に達した。
だが、現代のティーンエージャーは、まだ会話もできない乳幼児のころからおとなしくさせるために親からタブレット端末を与えられ、インターネットに親しんできた世代だ。オーストラリア政府によると、2020年の時点で4歳の子どもの80%がインターネットにアクセスし、30%が自分のデバイスを使用。12歳では半数が自分のデバイスを所有している。
通信大手オプタスによると、子どもはおおむね8〜12歳で最初の携帯電話(スマホ)を買い与えられている(2022年時点)。
また、オーストラリア政府の調査(2024年9月)によると、同年に1回でもソーシャルメディアまたはメッセージサービスを利用した8〜12歳の子どもの割合は84%に達した。それ以上の年齢になれば、おそらくほぼ全員が何らかの形でソーシャルメディアを利用していると見て間違いなさそうだ。
ここまで浸透しまった状況で、今さら「ソーシャルメディアを使うな」と言っても、素直に言うことを聞く子どもがどれだけいるのだろうか。
「②ガチで効果あるの? オーストラリアで世界初の16歳以下SNS禁止 子どもたちを守れるの? それとも「ザル法」?」に続く
■ソース
ONLINE SAFETY AMENDMENT (SOCIAL MEDIA MINIMUM AGE) ACT 2024 (NO. 127, 2024) – SCHEDULE 1 Amendments
Social media reforms to protect our kids online pass Parliament(Prime Minister of Australia)
Protecting Australian kids from social media harm(Prime Minister of Australia)
Support for under-16 social media ban soars to 77% among Australians(YouGov)