世界に咲き誇る日本文化─ザ・ライジング・サン/花のある生活 – flower in life – 第61回

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西宮能楽堂の舞台に寄せた装花。油彩作品と調和し、伝統と現代が1つの美を奏でます

 明けましておめでとうございます。

 2026年の幕開けにふさわしく、輝かしいご来光のように、新春の晴れやかないけばな作品をお届けいたします。

 昨年は映画『国宝』が話題を集め、歌舞伎の継承に生きる人びとの孤高と情熱が多くの共感を呼びました。華やかな舞台の裏に潜む厳しさ、そして受け継ぐ者の静かな決意──芸術の真の姿を見せてくれた作品でした。

 同じ頃、私は能楽の演目の1つである『野守』の舞台を拝見しました。ちょうど懇意にして頂いているご子息の主演舞台と重なり、袖で見守られるお父様の姿が印象的で、舞台全体に清らかな緊張感が満ちていました。日本の伝統的な文化においては、深い精神性を要するものが多く、一筋縄ではいかない厳しさがあります。だからこそ守り続ける価値があり、これからの時代を生きる人たちへの大切な財産であると感じています。

 『野守』の一節に、世を正す鬼神が鏡を手にして現れる場面があります。その明鏡に映るものは、人の心の奥に潜む真実。またその鏡が光を放った時、それは暗黒を照らす灯火であり、真の心をこの先々へと導いてくれるものであると、私は解釈しています。

 表現することに向かって自らの“光と影”を見つめた時、希望や夢だけではなく、苦悩や諦めが浮かび上がってくるのかもしれません。それでも進みゆくその先に、まだ見ぬ芸術の美しさ、伝統を守りつつも進化しながら歩みゆく、日本文化が世界に咲き誇ってゆくのだと思っています。

 この舞台の情景をいけばなに託し、鬼灯を明かりに見立てて、真竹に金箔を貼り、生命力を表す松と、水引をモダンなアート感覚で垂らしてみました。足元には流木に漆を塗り重ね、いばらの道を表しています。

 本年の皇室の方々を中心に開催される歌会始の御題(ぎょだい)は「明」です。

 新春の朝、東の空に昇る太陽のように、希望の光が再びこの世界を優しく包みますように。

このコラムの著者

多田玲秋(Tada Reishu)

いけばな作家
Web: https://www.instagram.com/yoshimi_ikebana/

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