産官学で取り組む福岡県 「アジア太平洋水素サミット&展示会」に出展

水素エネルギー社会の実現に取り組む「福岡県水素グリーン成長戦略会議」(事務局:福岡県庁)は11月20〜21日、オーストラリアのシドニー国際コンベンション・センター(ICCシドニー)で開かれた「アジア太平洋水素サミット&展示会2025」に出展した。戦略会議と九州大学、県内に拠点を持つものづくり企業4社が参加し、水素エネルギー関連の技術や商品、普及の取り組みなどをアピールした。
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各出展者の展示内容は次の通り(企業名は50音順)。
◇福岡県水素グリーン成長戦略会議:2030年に「水素社会のフロントランナー」となるべく推進している産官学の連携や地域内の水素産業の振興など
◇九州大学:20年以上前から進めてきた水素エネルギーの基礎研究から生産、社会実装に至るまでのトータルな取り組み
◇岡崎製作所:マイナス253度の極低温の液体水素や、100メガパスカルの超高圧の水素ガスといった過酷な環境に耐える温度センサー
◇九州計測器:目に見えない水素ガスを可視化する検知器と、危険な水素火災を目視、防止する拡張現実(AR)ウェアラブルグラス
◇鷹取製作所:100メガパスカルの超高圧下で、水素脆化(金属内に入った水素により強度が低下すること)せず、かつ安価に製造できる銅合金鋳物バルブの独自技術
◇ヤンマーエネルギーシステム:水素ガスを専焼または混焼し、発電した電力と排熱を同時に利用する高効率のコージェネレーション(熱電供給)システム

出展企業の独自技術に高い関心
戦略会議がオーストラリアの展示会への出展するのは、メルボルンで昨年11月に開催された再エネ関連の「オール・エナジー・オーストラリア2024」に続いて2回目。水素エネルギーに特化した今回は日本企業も多数出展した中で、技術に強みを持つ福岡県のブースは、ニューサウスウェールズ州のペニー・シャープ気候変動・エネルギー・環境相が視察に訪れるなど高い関心を集めた。
アジア太平洋水素サミット&展示会の開催は今回が3回目。専門家によるシンポジウムやセミナー、講演も行われた。来年は11月にアデレードで開かれる予定だ。
展示会に先立ち、福岡県の出展者一行は11月18日、ニューサウスウェールズ州政府が主催した視察ツアーに参加し、水素など脱炭素の産業集積が進む同州東部の重工業都市ニューカッスルを訪問した。同市庁舎で行われた講演会を聴講した後、ニューカッスル・エネルギー資源研究所(NIER)を訪れ、民間と共同で水素など再エネの研究開発を行っている施設を視察した。
なお、福岡県ブースの装飾や展示パネルなどの現地手配は、シドニーのマーケティング会社「グローバル・プロモーションズ・オーストラリア」が担当した。
水素供給地・オーストラリアで商機をつかむ
水素の「需要地」である福岡県が20年以上前から産業振興に取り組む一方で、オーストラリアは水素の「供給地」としての整備を進めている。
福岡県は2004年に戦略会議の前身を立ち上げ、産官学で水素の研究開発や産業育成に取り組んできた。2023年には、オーストラリア東部ニューサウスウェールズ(NSW)州政府と「水素分野における協力促進に関する覚書(MOU)」を締結。展示会への出展や人材交流などを進めている。
オーストラリアは国内7カ所で「水素ハブ」の建設計画を推進しており、2024年には税制優遇措置や政策の指針「全国水素戦略」を発表した。石炭・天然ガスに代わる脱炭素時代の主力輸出商品として、水素エネルギーの生産・開発に力を入れている。
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