意外と身近な薬と薬の飲み合わせ/知って安心!オーストラリアの薬事情⑥

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 前回は、薬と食べ物の相互作用(drug–food interaction)について解説しました。グレープフルーツなど身近な食品が薬の効き方に影響することがある、という内容でした。今回はその第2弾として、薬と薬の相互作用(drug–drug interaction)についてお話しします。

 「相互作用」と聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、実はとても身近なものです。処方薬同士だけでなく、市販薬やサプリメント、ビタミン剤との組み合わせでも起こります。

 オーストラリアでは、薬局やスーパーマーケットで多くの製品を手軽に購入できます。その便利さの一方で、「知らないうちに一緒に飲んでいた」というケースも少なくありません。特に、かぜをひいた時や体調を崩した時は、いつもの薬に加えて市販薬を追加することもあるため、注意が必要です。

ビタミン剤やサプリメントによる影響

 「ビタミンだから安心」「自然のものだから安全」と思われがちですが、サプリメントも体に作用する成分です。作用がある以上、他の薬に影響する可能性があります。

 例えば、セントジョーンズワート(St John’s Wort)は気分のサポート目的で使用されることがありますが、一部の処方薬の効きを弱めることが知られています。経口避妊薬や抗うつ薬などに影響する可能性があります。

 イチョウ葉エキスやフィッシュオイル(魚油)は、血液を固まりにくくする働きがあります。抗凝固薬や抗血小板薬を服用している場合、出血しやすくなる可能性があります。

 また、カルシウムや鉄のサプリメントは、甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)や一部の抗生物質の吸収を妨げることがあります。この場合は数時間あけて服用することで防げることが多いですが、自己判断せず確認することが大切です。

 サプリメントも「健康食品」ではなく「体に作用するもの」と考え、医師や薬剤師に必ず伝えるようにしましょう。

市販のかぜ薬と処方薬

 かぜ薬や鎮痛薬は、最も身近で注意が必要な組み合わせです。

 イブプロフェン(ibuprofen)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は広く使用されていますが、血圧の薬、腎臓に影響する薬、利尿薬などを服用している方では、体への負担が強くなることがあります。高齢者や持病のある人は特に注意が必要です。

 また、市販のかぜ薬には複数の成分が含まれていることが多く、眠気を起こす成分や鎮痛成分がすでに処方薬と重なっていることもあります。

 例えば、パラセタモール(パナドール®など)が処方薬と市販薬の両方に含まれている場合、知らないうちに重複服用となることがあります。用量を超えると肝臓への負担が大きくなるため注意が必要です。

 「いつも飲んでいる市販薬だから大丈夫」と思わず、処方薬を服用中の場合は一度確認する習慣をつけましょう。

睡眠薬や抗不安薬との併用

 眠気を起こす薬同士を併用すると、眠気やふらつきが強まることがあります。

 処方された睡眠薬や抗不安薬に加えて、市販の抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)やかぜ薬を服用すると、想像以上に強い眠気が出ることがあります。アルコールも同様に作用を強めます。

 特に高齢者の場合、転倒や事故のリスクが高まる可能性があります。夜間のトイレ移動など、思わぬ場面で影響が出ることもあります。

相互作用を防ぐためにできること

 薬の相互作用は、多くの場合、事前の確認で防ぐことができます。

 「サプリメントは自然由来だから問題ない」と思い込まず、体に作用するものであることを意識しましょう。前回の食べ物との相互作用と同様に、吸収や分解に影響することがあります。

・現在服用している薬やサプリメントを一覧にしておく
・新しい製品を始める前に薬剤師に相談する
・体調の変化があれば早めに伝える

 この3点を心掛けるだけで、安全性は大きく高まります。

最後に

 薬と薬の相互作用は決して珍しいものではありません。しかし、必要以上に怖がる必要もありません。

 大切なのは、「自己判断で追加しない」「サプリメントも必ず伝える」という習慣です。  薬局でのほんのひと言の確認が、自身の健康を守ることにつながります。日常生活の中で、ぜひ意識してみてください。

Profile

鐵池めぐみ(カナイケメグミ)
薬剤師。シドニー大学薬学部卒業後、オーストラリア薬剤師国家資格を取得。シドニー及び南オーストラリア州の大学病院で、がん治療を中心とした臨床薬学に20年以上従事。現在は、がん治療の研究に携わる傍ら、薬局を拠点に英語と日本語で薬の相談や服薬支援を行っている。
Email: megkanaike@gmail.com





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