花のある生活 第43回
─ flower in life ─
神の宿る木
恭賀新年。明けましておめでとうございます。今年も伝統あるいけばなの美しさと、いけばなが現代にできる新しいことを日常の中から見つけて、皆様にお届けしていこうと思います。
生命力が強く長寿の木であり、葉が上を向いて神を待つと言われる松の木。我が家でも松だけは枯らしてはならぬと、丹念に手入れが行われています。皆様は根引き松という種類があるのをご存知でしょうか、根が付いたままの姿から「成長し続けるように」「地に足が着くように」という願いが込められています。私の父はお正月準備に両脇の玄関柱に2本の根引き松を、向かって右に雄松(黒松)、左に雌松(赤松)を取り付けます。お正月に神を待つための伝統的な習わしです。
1000年前に詠まれた歌に、「常盤(ときわ)なる松の緑も春来ればいまひとしほの色まさりけり」とあり、古今和歌集の中に書かれています。昔は寒い冬には春の暖かさが待ち遠しかったという意味でしょうか。今も変わらず、伝統的な風習が日本には多く残っておりオーストラリアに限らず海外で暮らす日本人の節目としても、松の内の行事は大切にされていると思います。
新年最初のいけばなは寿松を使っていけております。松の根をあえて見せるように花器から出して、松葉を天高く上向きになるようにグッと立ち上げ、竹ひごで作られた紅白の水引と金に塗られた細竹の3種類で新年の迎え花をアレンジしています。海外でのお正月も年神様の依り代として、おめでたいご祝儀ものをそろえた迎え花になると思いますので、当地にある材料で新年を迎えられる慶びをお花と共に感じて頂けたらと思います。
本年も日豪プレス「花のある生活」−flower inlife−をどうぞ宜しくお願い申し上げます。
このコラムの著者
Yoshimi
いけばな講師。幼少期より草月流を学ぶ。シンガポールでの華道活動を経て、現在はシドニーでいけばな文化芸術の発展に務める。令和元年には世界遺産オペラ・ハウスで日本伝統芸能祭に出演。華道教室を主宰。オンライン・レッスン開催中。
Web: 7elements.me