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夏を告げる紫の丘陵/タスマニア巡り

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第14回 タスマニア巡り
夏を告げる紫の丘陵

丘陵を紫に埋めるラベンダーは夏の風物詩の1つ
丘陵を紫に埋めるラベンダーは夏の風物詩の1つ

 タスマニアの夏を彩る風物詩の1つがラベンダー。西岸海洋性気候に属する当地は高温多湿を嫌うラベンダーの栽培に適しているため、公園や庭でよく見掛けることができ、実はタスマニアでも北海道・富良野の様な一面紫のラベンダー畑を見ることができるのです。

 ロンセストンから車で北東に約1時間、小高い丘の向こうに隠れるようにあるのがブライドストゥ・ラベンダー・ファームです。世界一広いラベンダー園と言われ、260エーカー超の畑に植えられているラベンダーは何と65万株。富良野で随一の農園でも9万株。東京ドーム約20個分と言えば、その広大さも伝わるでしょう。

 育てられているラベンダーは「Lavendula angustifolia(真正ラベンダー)」という最高級精油が採れる品種で、ロンドンの調香師C.K.Dennyが、1921年にフレンチ・アルプスから種を持ち込み栽培を始めました。交雑種ができやすく純正を保つのが難しいため、影響を受けにくいこの場所を農場にしたそうです。

 創設から100年が経った今でも伝統的な製法を受け継ぎ、花を大きなドラム缶で蒸すだけのシンプルな蒸留法で100%純粋なラベンダー・オイルを精油しています。ちなみに1キロのオイルを精製するのに100キロの花が必要なのだとか。敷地が広大なのも納得です。

 精油用に栽培されているため、最も花の香りが強くなる1月中旬から収穫が始まるこちらのラベンダー畑。見頃は12月中旬から1月初週までと短めです。この時期にロンセストンを訪れたならシーズンを逃さないよう足を延ばしてみましょう。ここで生産されたオイルやハンド・クリームなどは店舗やオンラインで購入が可能ですが、現地でぜひ試したいのがここでしか味わえないラベンダー・アイスクリーム。強過ぎずしっかりとしたラベンダーの香りと味を楽しめる人気商品で、芳香の強い味が苦手な人にもお薦めです。景色に、香りに、味にと、五感でタスマニアの夏の風物詩をお楽しみください。

このコラムの著者

稲田 正人

稲田 正人

タスマニアのツアー・ガイド/コーディネーター。タスマニア大学で動物学・環境学を学んだ後、のんびりゆったりした生活感に魅せられ、そのままタスマニアに在住。現在は現地旅行会社AJPR(Web: www.ajpr.com.au)に勤務する傍ら、多過ぎる趣味に追われる日々を満喫中。

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