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京都のブランド産品「白子タケノコ」/出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記

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出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記

出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記
~オーストラリアでの日本食の変遷を辿る~

其の伍拾
京都のブランド産品「白子タケノコ」

 京都は食の上でも魅力のある街で、立ち寄る理由はたくさんありますが、京タケノコ(平成元年、京のブランド産品に指定)も魅力の食材の1つです。オーストラリアでタケノコ栽培に関わる機会があった際、長岡京市のJA京都中央、道尾さんという方と知り合いになりました。その縁から、著書『Essentially Japanese』の取材も快く引き受けて下さいました。

 当時QLD州で、インドネシア産のラタス種のタケノコの、食用としてのマーケット進出が試みられていました。中でも、ケアンズから西へ2時間ほど入ったお茶の産地として知られるテーブル・ランド周辺の竹林の成長は早く、すぐにジャングル状態となり、食用としてのタケノコ、特に日本料理には難しいものでした。コンサルティングで訪れた上海の竹林もワイルドで、国が違えば栽培法も変わるのだと圧倒されました。

 道尾さんが案内してくれた長岡京の農園は、入り口こそ簡単な柵でしたが、中にはよく手入れが行き届いた庭園のように美しい竹林が広がっていました。「ホリ」と呼ばれるタケノコ専用の鍬と手籠を手に、竹林から現れたタケノコ農園主のご主人と、ご子息の姿さえ、映画のひとコマのように思えるほどでした。そこで、京都式軟化栽培法についてお話を聞かせて頂きました。

 タケノコが採れるのは通常3~5月。この3カ月のために1年を通じて竹藪の手入れをします。軟化栽培法では、タケノコの収穫が終わる4~5月に日照を考え、竹の上部を切り、親竹を選びシンを止め、肥料やりをします。その後9月ごろ、老竹を間引き、タケノコ畑一面に、一輪車でワラを敷き、置き土をし、丹精込めて育てられます。この手間のおかげで「白子たけのこ」とも呼ばれる、柔らかな食感でえぐみの少なく香り高い、おいしい京タケノコが頂けるわけです。

 そして、道尾さんの案内で、竹を使った産業を広める活動をされているグループの方々に、お話を聞かせて頂きました。竹細工や工芸品、竹を炭にして乾燥剤などに使う研究や、肥料としての竹の利用などに取り組まれており、竹の産業としての魅力を語られていました。昨今、我々の身の回りでも、竹製品をよく見掛けるようになりました。

 長岡京には、地元で採れたタケノコを頂けるレストランがあります。そのうちの1つに案内してもらいましたが、タケノコの和え物、天ぷら、汁物などどれもおいしく、特にタケノコ農園を見学させて頂いた後だったので、その感動もひとしおでした。ぜひ、皆さんも京都を訪れた際に、京タケノコを召し上がり下さい。

 更に、道尾さんの知人で、長岡京で地域の仲間たちと「おふくろの味」会の代表を務められている郷土料理研究家、並川悦子さんをご紹介頂きました。私より少し年上の並川さんは、大阪から長岡京に嫁がれ、郷土料理を受け継いできた自身の経験から、郷土料理の掘り起こし、特産品を生かしたメニューの開発を若い人たちと積極的に行っています。料理教室では、地元京野菜を家庭で楽しめるようにと、伝統を大事にしつつ幅広いレパートリーの料理を作られていました。日本各地で郷土料理継承に力を注ぎ、地道な活動を積み重ねている方々にエールを送りたいです。

このコラムの著者

出倉秀男(憲秀)

出倉秀男(憲秀)

料理研究家。英文による日本料理の著者、Fine Arts of Japanese Cooking、Encyclopaedia of Japanese cuisine、Japanese cooking at home, Essentially Japanese他著書多数 。Japanese Functions of Sydney代表。Culinary Studio Dekura代表。外務省大臣賞、農林水産大臣賞受賞。シドニー四条真流師範、四條司家師範、全国技能士連盟師範、日本食普及親善大使。2021年春の叙勲で日本国より旭日双光章を受章。





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