第6回
五輪決定に浮かれる夜
Southbank
Text, Photo: Taka Uematsu
サウスバンク。“リバー・シティー”の異名を持つブリスベンの街並みを蛇行するブリスベン川が、ちょうどシティーの中心部をかすめる「南岸」。何の捻りもないネーミングだが、シティーから徒歩圏内の憩いの場として人気は高い。同エリアは、ブリスベンの世界デビューとも言うべき1988年開催のブリスベン万博のメイン会場だった地を、万博終了後も段階的に整備を続けて、今の姿がある。
へそ曲がりの筆者は、サウスバンクの“お約束”人工ビーチに興味はない。その代わりに推すのが、最近のブリスベンで最もフォトジェニックかつインスタ映えするスポットである「BRISBANE」のサイン。しばらく化粧直しで柵に囲まれていたが、久しぶりに通ると五輪開催決定のデコレーションにひと役買っていた。この写真は、ブリスベンが2032年の五輪開催都市に決まった日の夜に撮った。決定発表直後で、背後のビルの照明での「BRISBANE 2032」が間に合っていないのはご愛嬌。この日のサウスバンクはグリーンとゴールドに染まり、人びともコロナ禍を束の間忘れて喜んでいた。
33年前、万博で世界を知ったブリスベンが、11年後、再び世界の注目を集める。これと言った顔のない現在のブリスベンだが、さすがに11年の時間があれば十分だろう。新たなブリスベンの顔が育つまでは当面、この「BRISBANE」サインはいろいろな所で露出し続ける――。そう思うと、少々ベタでもフィーチャーしておきたかった。11年後、ブリスベンは世界中から訪れる人にどんな印象を与える街になっているだろうか。