花のある生活 ─ flower in life ─ 第31回
喜びは末広がりに
明けましておめでとうございます。気持ちも新たに2021年を迎えられる喜びを、いけばなを通してお伝えしていけたらと思います。お正月といえば松竹梅に紅白のお水引きを掛け、縁起の良い草花に願いを込めてお正月飾りに取り入れます。今でも日本ではその伝統が守られ、オフィスのエントランスなどには門松や祝い花が置かれています。
オーストラリアで迎える新年に若松や蛇の目松などを用いることは困難で、真夏の当地では植物の良さを発揮できるかどうかも分かりません。
私が東南アジアに住んでいたころ、国花でもあった蘭の花を使用し、真っすぐに伸びた葉を合わせて生け込みをしたところ大変喜んで頂きました。オーストラリアには豊富なネイティブ・フラワーや草木花がありますので、素材をうまくチョイスしてお花いけを試されてみてはと思います。
竹は成長が早く、真っすぐ育つため生命や未来を象徴しています。また、秩序正しく等間隔にできる節目が節操のある成長を、竹のしなりは柔軟な対応を意味します。南天は難を転じる=難転と言われ、縁起ものです。華道を通して言葉に込められた日本の文化も感じて頂けたらと思います。
当地で手に入りやすい花材で、成長が早くしなりがあり、赤珊瑚を彷彿とさせる美しい色合いの珊瑚ミズキや、節目の素材が1年の始まりにふさわしいコルクツリーに、ガーベラなどの色花を好みで足されると祝い花が生けられます。いけばなは日本人が大切にしてきた日常の中の芸術ですので、ご自身の想いを花に託してその美しさを感じて頂ける1年の始まりであればと良いなと思います。
ひと時の喜びが末広がりに皆様の元にありますように。花のある生活のコラムと共に、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
このコラムの著者
Yoshimi
いけばな講師。幼少期より草月流を学ぶ。シンガポールでの華道活動を経て、現在はシドニーでいけばな文化芸術の発展に務める。令和元年には世界遺産オペラ・ハウスで日本伝統芸能祭に出演。華道教室を主宰。オンラインレッスン開催中。
Web: 7elements.me