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新天地でチャレンジ – ラグビー豪州代表キャプテンMichael Hooper氏対談

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新天地でチャレンジする
ということ

ラグビー豪州代表キャプテン
Michael Hooper

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doq®代表
作野善教

 日系のクロス・カルチャー・マーケティング会社doq®の創業者として数々のビジネス・シーンで活躍、現在は日豪プレスのチェア・パーソンも務める作野善教が、コミュニティーのキー・パーソンとビジネス対談を行う本企画。第4回となる今回は、ラグビー・オーストラリア代表、ワラビーズのキャプテンを務め、昨年末よりジャパン・ラグビー・トップ・リーグ、トヨタ自動車ヴェルブリッツに所属するラグビー選手、マイケル・フーパー氏にお話を伺った。
(監修:馬場一哉、撮影:伊地知直緒人)

PROFILE

マイケル・フーパー

マイケル・フーパー
シドニー出身のラグビー・ユニオン選手。2010年、キャンベラに本拠地を置くブランビーズに所属しスーパー・ラグビーデビューを果たす。13年にシドニーを本拠地とするワラタスに移籍。12年にオーストラリア代表、ワラビーズに初選出され、14年からはキャプテンを務め、チームの支柱として活躍。20年末、ジャパン・ラグビー・トップ・リーグ、トヨタ自動車ヴェルブリッツに移籍した。

PROFILE

さくのよしのり

さくのよしのり
doq®創業者・グループ·マネージング・ディレクター。数々の日系ブランドのマーケティングを手掛け、ビジネスを成長させてきた経験を持つ。2016年より3年連 続NSW州エキスポート・アワード・ファイナリスト、19年シドニー・デザイン・アワード・シルバー賞、Mumbrellaトラベル・マーケティング・アワード・ファイナリスト、移民創業者を称える「エスニック・ビジネスアワード」史上2人目の日本人ファイナリスト。

作野10月末~11月上旬に行われたオーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン3国による代表戦「TriNations」シリーズで2020年を締めくくられたと思いますが振り返っていかがですか。

マイケル「TriNations」ではニュージーランドへの勝利もありましたし、強豪とのテスト・マッチとしてたいへん有意義でした。ただ、今年は新型コロナウイルスの影響でとんでもない年になりましたね。

作野そんな中、日本人にとって明るいニュースが、マイケル選手のトヨタ自動車ヴェルブリッツ(ジャパン・ラグビー・トップ・リーグ)への移籍です。心境はいかがですか。

マイケル日本へは、ラグビーの試合での遠征を含め旅行でも何度か行ったことがあります。ただ、18歳の時にラグビーを始めて以来、日本はもちろん国外のチームでプレーするのも初めての経験ですし、今回は妻も一緒なので非常に楽しみです。

作野旅行で海外を訪れることと、住むことの間には大きな違いがあると思います。そのあたりはどのようにお考えですか。

マイケルその点については、むしろ皆さんに教えて欲しいくらいですが、まず必要だと考えているのは日本語を学ぶことです。オーストラリアに住んでいる日本人の皆さんは英語を修得されているので分かると思いますが、やはり住む場所の言語を学ぶことは大切ですよね。作野さんは英語の修得のために学校で勉強などされましたか。

作野ええ。ただ学校では基礎的な部分を習う程度でした。自分の英語力が最も伸びたと感じたのは東京の会社で働いていた時ですね。外資系の広告代理店に勤めていたのですが上司がアメリカ人、顧客はイギリス人という、英語を使わざるを得ない環境でした。

マイケル修得できたと感じるまでどのくらいの時間が掛かりましたか。

作野そうですね、比較的ストレスなく話せるようになるまでに2年程度は掛かったと思います。マイケル選手の場合、移籍後、多くの日本人選手と交流することになりますし、日本語でのコミュニケーションを意識していくことでメンバーとの関係性も高まります。それがプレーにも確実に良い影響を与えますよね。

マイケルその通りだと思います。チーム・メンバーとの交流で日本語修得が更に早まることを期待しています。

作野一般的な言語習得と比べてスポーツの言語修得でトリッキーなのは、専門用語がたくさんある点ですね。チーム内でのコミュニケーションを円滑に行えるようにするために、まずは一般的な日本語よりも専門用語の修得を優先すべきかもしれません。

マイケルそう思います。良いアドバイスをありがとうございます。

真のリーダーシップとは

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作野日本は2015年のワールドカップで南アフリカを破り、ホスト国として開催した2019年の大会ではベスト8に入るなど近年成長を遂げていますがトップ・レベルまでは至っていないというのが現状です。日本のラグビー・シーンをどのように捉えておりますか。

マイケル準々決勝まで進出した2019年のワールドカップの結果が示すように日本代表は年々成長している印象を持っています。ニュージーランド出身のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチの元、さまざまなアイディアを得るなど成功できる環境にいるのは間違いないですね。日本のラグビー・シーンの変遷という点では私よりも日本で育った作野さんのほうがご存知なのでは。

作野そうですね。10年前に比べるとラグビー人気は明らかに高まっています。日本で開催されたワールドカップの影響で多くのスター・プレイヤーが生まれ、それまでラグビーを知らなかった人たもラグビーに興味を持つようになりました。今はブームも少し落ち着いた状況だと思われますが、強国・オーストラリア代表のキャプテンであるマイケル選手が日本でプレーされることで日本のラグビー界に再び大きなインパクトが与えられると思います。日本のラグビーファンはもちろん、ラグビーを頑張る子どもたちにとってもマイケル選手はきっとヒーローとなるに違いありません。

マイケル日本では高校生のラグビー大会「HANAZONO」が人気だと聞いています。

作野ラグビーに関わらず、高校生のスポーツ大会は観ていて面白いですよね。サラリーやスポンサーなど、コマーシャル要素が全くない分、純粋に目の前のゲームに全ての情熱を注いでいる姿を観ることができます。

マイケルおっしゃる通りです。学生時代に得た仲間たちは掛け替えのない存在で一生の財産になりますね。

作野私は学生時代に弁当工場で日雇いのアルバイトを経験したことがあるのですが、業務内容は弁当箱に食材を詰めるだけという非常に単調で退屈なものでした。ただ、そんな仕事でもチーム・メイトと一緒に働いていると楽しくて仕方がなかったんです。その時に誰と働くかという、いわばチームワークの大切さを学びました。

マイケルそういう意味ではラグビーは究極のチームワークが求められる競技です。例えばバスケットボールでは1人のスター選手がチームを勝利に導くこともありますが、ラグビーはリザーブも含めた23人全員にはっきりとした役割があり、それぞれがしっかり連動して機能する必要があります。

作野チームワークが最重要視される中、チームをまとめるキャプテンの資質も大きく問われると思います。マイケル選手はオーストラリア代表でキャプテンを務めておられますが、最高レベルの選手たちを1つのチームにまとめ上げるのは並大抵のことではないと思います。

マイケルまず、私にとって、代表のキャプテンとしてチームを率いることは大変光栄なことです。更にそれは家族にとっても非常に喜ばしいことだと思います。

作野どのようにチームをまとめ、どのようにレベルアップを図りましたか。リーダーシップについてご意見をお聞かせください。

マイケルリーダーシップで最も重要なのは、さまざまな物事を重層的に重ね合わせていくことです。私自身の考えも変わりますし、状況により常にアプローチを変える必要があります。私自身、確かな技術、考えを持った上でチームにそれを還元するようにしていますが、チームではメンバーそれぞれに得意分野などがあります。それらを効果的にまとめていくのがリーダーの責任だと思います。

私自身、まだ学んでいる途中ではありますが大切なのは許すことでしょう。皆がお互いを認め、許し合うこと、それができて始めてそれぞれのベスト・スキルを机上に出せるようになります。チームのメンバーは私よりも得意な分野を持っていますし、同時に私のほうが得意なこともあります。チームのメンタリティを高めていくためにはしっかりとコミュニケーションを取って、それらをシェアしていくことが重要だと思います。

お互いを知ることで、自分たちの最高の資質を引き出し、その上で目標を明確にすることで、成功するチームとして機能し始めます。メンバー全員が同じ場所に立ち、同じ方向を向くことで、良い結果に向かって進むことができるのです。

作野日本へ行くことはカルチャーの違いや言葉の壁もあり、マイケルさんにとって更なる挑戦になると思います。培ってきたリーダーシップをどのように生かして乗り越えていこうと考えていますか。

マイケル現時点でどのポジションを与えられるかまだ分かりませんが、ニュージーランド人のコーチの元、日本人以外にも多くの国の選手がいる中、新たなことに挑戦できるのが楽しみです。シーズン開始まであまり間がないタイミングでの入団になるため、同じステージに最も速く、最も良い状態でたどり着き、しっかりと機能できる状態に持っていくことが最初の課題です。そのために、常にオープン・マインドでチームのカルチャーをよく見ながら、自分自身を変えていくことも必要だと思っています。

作野スポーツの場というのは、常にフェアで開かれた環境ですよね。かつて米国のカリフォルニアで学生をしていたころに1年間所属していたサッカー・チームがあるのですが、25人中24人がメキシコ人で、使われている言語はスペイン語でした。全てのコミュニケーションがスペイン語だったため要となる言葉は頑張って覚えましたが、コミュニケーションはスムーズではありませんでした。そんな中、日本への帰国直前の最終試合終了後にチーム・メンバーが私のために涙を流してくれたんです。勝つのも負けるのも一緒、多くの時間を共有したことで、スポーツがコミュニケーション・ツールの1つになってくれていたのだと実感しました。

マイケル興味深いお話ですね。

作野日本のシーズンは5月に終了しますが、その後のプランはありますか。

マイケルシーズン終了後はオーストラリアのチームに戻りますが、その時には日本での新しいチャレンジを経て新しいラグビーのスタイルを身に着けていたいですね。

日本でチャレンジしたいこと

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作野ラグビー以外に日本でトライしたいことはありますか。

マイケル日本の雪山を楽しみたいですね。私が滞在する愛知県の近くでは岐阜県に良いスキー場が多くあると聞いています。

作野そうですね。日本全国数多くのスキー場がありますが、やはり北海道は訪れるべきだと思います。最近は道央にあるパウダーベルトというエリアが注目されています。空港からのアクセスの良さに加え、雪質の良さは日本でも随一です。

マイケルハイスクールのころ、家族でスノーボードを楽しむために北海道のニセコに旅行へ行ったことがありますが、ぜひ他のスキー場も訪れてみたいです。オーストラリアと比べ日本には数多くの雪山があって、更にそれぞれ雪質も違うと思うので楽しみです。また日本でもサーフィンをしてみたいです。どこか良いところをご存知ですか。

作野西の方面ですと四国の高知県に良いスポットが多くあります。

マイケルぜひ行ってみたいと思います。オーストラリアとはまた違った波が楽しめることを期待しています。

作野海外に在住する上で食を楽しむことも、いち早くその土地に溶け込む術の1つだと思います。日本食はお好きですか。

マイケル大好きです。中でもラーメンが好きですね。ニセコに行った際に、1月の極寒の雪山で食べた蟹ラーメンが忘れられないです。大きな器に盛られたラーメンが非常においしくて、スノーボードで疲れきった体に染み渡りました。すしも好きですし、他にもいろいろなものを試してみたいです。

作野この機会に日本のことで聞いておきたいことはありますか。

マイケル日本ではいろいろと独自のマナーがあると聞いています。事前に知っておいたほうが良いことはありますか。

作野ラーメンがお好きということであればぜひお勧めしたいのが、ラーメン店では静かに食べず、麺を思いきりすすって食べることです。

マイケル本当に!?でもそれなら私にもできそうですね(笑)

作野はい(笑)。また、日本のビジネスシーンでは未だにビジネス・カードの交換が主流ですので、マイケル選手もスポンサーとの面会などの際にはビジネス・カードを持ち歩くことをお勧めします。その他、電車など公共交通機関での通話は原則として禁止されています。

マイケルラグビーワールドカップで日本に言った時に公共交通機関での通話については友人から聞きました。オーストラリアだとバスの中でうるさく電話で話している人も多いですし、良いルールだと思います。

作野携帯電話のシグナルが心臓のペースメーカーに影響するという理由から始まったマナーだと聞いていますが、余計なトラブルを招かないためにも気をつけたほうが良い点だと思います。

マイケルなるほど。ところで、日本人は外国人が日本語を学ぶ姿勢についてどう思われますか。

作野もちろん大歓迎だと思います。日本人は学校で長年英語を勉強しているにも関わらず、完璧に話すことを目指し、失敗を恐れる傾向があります。そのため、多くの日本人が英語でのコミュニケーションになかなかトライしません。日本人はコミュニケーションをしてくれないと感じられることも多々あるかもしれませんが、実際はある程度理解していますし、話せることを望んでいます。そういった日本人のメンタリティーはある程度理解しておくとスムーズかもしれません。

マイケルなるほど。参考になります。

作野最後に、チャレンジングな環境で頑張られているビジネス・パーソンや勉強を頑張っている学生などを始め、本誌の読者へのメッセージを頂けますか。

マイケルまずは、自分の心を開くことが大事だと思います。私は現在、大好きなシドニーで暮らし、大好きなビーチがある快適な環境にいますが、これから全く別の場所に移り住み、更に言葉も話せず、人間関係もゼロからという状況に向かいます。快適な環境ではない所に飛び込むわけですが、それでも後から振り返った時に、それが人生の大きな転機になってくれていることを望んでいます。新しい人との出合いや新しい文化との出合いはとても楽しいことですしワクワクします。それが最初は難しいことであってもチャレンジする価値はあります。皆さんも頑張ってください。

作野良いメッセージをありがとうございます。本日はお忙しい中お時間頂きありがとうございました。日本での活躍を期待しています。

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(12月8日、日豪プレス・オフィスで)

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