オーストラリアのアート業界で活躍中のコラムニスト・ルーシーが
オーストラリアを中心に活躍するアーティストと彼らの作品をご紹介。
第22回 オーティス・ホープ・キャリー(Otis Hope Carey)
「NGALUNGGIRR MIINGGI – HEALING SPIRIT」
今回紹介するのは、アボリジニの血を引くニューサウスウェールズ州北部出身のサーファー・アーティスト、オーティス・ホープ・キャリーの作品だ。
キャリーは現在バイロンベイに拠点を置き、彼自身のルーツである伝統的なアボリジニ・アートと、現代的なオーストラリアのサーフィン文化を融合した彼独自のアートを制作し続けている。アボリジニ・アートで多用されるシンボルや物語を再構築しながら、アートを通じて現代の人びとに伝統的な文化を伝えている。
表題で紹介している「NGALUNGGIRRMIINGGI–HEALINGSPIRIT」について、オーティスはこう語っている。
「私たちは海をガアガル(Gaagal)と呼んでいます。ガアガルは非常に重要なクラン・トーテム(部族を象徴するもの)として、私たちに多くの癒しの要素をもたらしてくれます。
祖母はGumbaynggirr(アボリジニの一部族)で、彼女が亡くなってしまった時、彼女の魂を癒し、無事に海(Gaagal)へ戻れるようにしたいと考え、私はこの作品の制作を始めました。制作を進める中で家族の心と体は癒され、また、祖母が海へ、家へ帰れたのだと感じました」
絵を見ると、絡み合っている線が描かれており、複雑ながらも柔らかい印象を受ける。線は精神的な存在、個々の国、そして地球とのつながりを表しており、点は家族を守る闘争心、同時に癒しの要素のシンボルとして描かれている。
「作品には、私にとっての過去、現在、未来への課題を残すようにしています。過去に取り組むべきだったこと、過去を癒すこと、今取り組むべ
きこと、未来に向けて癒すこと、そして世代間のトラウマを子どもたちに引き継がないようにすること。作品が先住民族の人びとを癒し、非先住民族との関係を癒すことを望んでいます」
彼は制作への思いをこのように語っている。
オーティスは、NSW州立美術館の風景画で2020年ウィン賞のファイナリストに選出されている。また、シドニーのレッド・ファーンに位置する、世界的にも有名なチャイナ・ハイツ・ギャラリーの代表アーティストに認定されており、2021年2月12日から3月7日まで展示会を開催予定。詳しい情報は下記ウェブサイトから確認を。
China Heights Gallery
Web:chinaheights.com / Instagram:chinaheights / Instagram:otishopecarey
ルーシー・マイルス(Lucy Miles)
オーストラリアと日本のアート業界で25年以上の経歴を持つ。グリフィス大学で美術学士、クイーンズランド大学では美術史の優等学位を取得。現在、サウスポートを拠点にファイン・アート・コンサルタントとして活躍中。
■Instagram: @lucymilesfineart
■Web: www.lucymilesfineart.org
■Email: info@lucymilesfineart.org