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光陰矢の如し/花のある生活

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花のある生活 ─ flower in life ─ 第32回
光陰矢の如し

黒花器の白い足元がはぜた白い実と響き合います。先端近くの1本の軽い曲線が作品に少しの色気を足しています
黒花器の白い足元がはぜた白い実と響き合います。先端近くの1本の軽い曲線が作品に少しの色気を足しています

 1、2、3月は日々が早く過ぎると思いませんか。お正月から3月まではやることが多いのに思うように進まないことも多く、あっという間に過ぎてしまうことを調子よく表現した、「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」はその通りの言葉ですね。

 私が教えているいけばなのお稽古に「動きを表現する」、英語でCompositionExpressingonaMovementというものがあります。特に外国人の生徒の方に楽しく受けて頂けるレッスンです。動きを表す動詞を発想し、その言葉を感じさせるようにイメージを形にし、花をいけていきます。花と花、花と器の組み合わせが1つの枠にはまらないよう、変化を敢えて求める気持ちでいけることがあっても良いかと思います。いけるということは「造い形ける」「変い化ける」という意味も草月流では含んでいます。

 昨年12月号で使用した南京ハゼがはじけ、真っ白い綺麗な実が出てきました。時の経過を感じます。始まったばかりの2021年も、矢の如く過ぎて行くような気がします。今月のいけばなは、その矢が「飛ぶ」動きをイメージしています。掌で大きく弓を引き、力を溜めた矢が飛ぶが如く、歳月の経過と共に時制が変わり、草木が朽ちるその姿形もまた美しい。生きているのも枯れてからも木。花や木は枯れても別の美しさがあり、普段見過ごしている中に意外なものが見つかるかもしれません。

 小さな竹のようなシルエットの砥草は表面がザラザラしているため、昔から木工品や爪を磨く天然の鑢(やすり)として親しまれ、研ぐ草という変形から砥草と呼ばれています。節の特徴を生かして時制を表し、砥草の先端が黄色く朽ちた様子も敢えて残して光陰(月日)の移り変わりに、矢のように鋭く空間を分割して中央に鮮やかな赤のグラジオラスを入れています。今を鮮やかに生きたいですね。

このコラムの著者

Yoshimi

Yoshimi

いけばな講師。幼少期より草月流を学ぶ。シンガポールでの華道活動を経て、現在はシドニーでいけばな文化芸術の発展に務める。令和元年には世界遺産オペラ・ハウスで日本伝統芸能祭に出演。華道教室を主宰。オンラインレッスン開催中。
Web: 7elements.me

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