書家れんのつきいち年中行事
第150回 上巳
ご機嫌いかがですか、れんです。
さて「上巳(じょうし)」と聞いてすぐに何のことだかお分かりになるでしょうか。毎年祝っているはずですが、この言葉自体はあまり耳にしないかもしれません。これは3月3日のひな祭りの日のことです。旧暦の3月初旬は桃の花が咲く季節だったので「桃の節句」とも呼ばれます。
「節句」とは伝統的な年中行事を行う節目になる日のことで、中でも江戸時代に幕府が公的な祝日として定めたものを「五節句」といい、他に1月7日の「人日(じんじつ)」、5月5日の「端午」、7月7日の「七夕」、9月9日の「重陽(ちょうよう)」があります。
節句は古代中国の陰陽五行説に由来しますが、驚くことに本家中国の3月3日は桃の花ともおひな様とも関係ありません。「桃の節句」や「ひな祭り」は日本特有なのだそうです。
ひな祭りは、女の子の健やかな成長を祈る行事です。ひな人形が飾られるようになったのは江戸時代。この泰平の時代にさまざまな物づくりの技術が発展。人形づくりも例外ではなく、ひな人形が豪華になりました。平安以来、紙の人形を川に流す「流しびな」の風習がありましたが、高価なひな人形を毎年川に流すわけにもいかなくなって、趣向が人形鑑賞へと移行したのです。
ところで万葉の時代、花といえば「梅」でした。万葉集には梅の歌が百首以上詠まれています。平安中期以降はそれが「桜」になって今に至りますが、上巳の「桃」や重陽の「菊」も毎年の節句で日本人に長く深く関わってきたのですね。
このコラムの著者
れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。作品「ふるさと」が国有財産として在豪日本国大使館蔵。豪・日・ドバイ・NZで作品展、大書ライブ、workshop多数。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に参加。シドニー総領事表彰。新元号「令和」揮毫(総領事館蔵)。豪五輪委員会で応援大書。書道教室運営。LINE stamp販売中。
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