第4回 タスマニア巡り
夕日が沈む街、ストローン
タスマニアはどのくらいの大きさかご存知でしょうか?地図上では豪州大陸との比較から、実際よりかなり小さめに考える人が多いようですが、タスマニアは北海道の約8割、世界でも26番目という大きな陸地。観光者の多くが訪れて初めてその大きさに驚くようです。
じっくり見て回るなら1週間あっても足りない当地ですが、ホバートやロンセストンを中心に東海岸や北部を巡るのが大半で、西海岸まで足を延ばす人は多くありません。逆にいえば、西海岸は人の少ない所で過ごしたい人にお薦めといえます。
そんな西海岸の拠点となるのが、ホバート空港から中央高地を超えて運転すること約5時間でたどり着く、ストローン(Strahan)です。
もともとは近場の鉱山へのアクセス港として作られた街で、その時の名残をとどめるのがレガッタ・ポイントにあるウエスト・コースト・ウィルダネス鉄道。今も隣町クイーンズタウンまで往復する観光用汽車として利用されています。
街に面するマッコーリー湾にはフランクリン川やゴードン川が流れ込み、川上で採られる銘木ヒューオン・パインの集積港としての一面もあります。港の製材所では製材の見学もできますし、ヒューオン・パインを始めとするタスマニア固有種の原木が手頃な価格で購入できます。
他にも監獄島として名高いサラ島や、州最大の砂丘ヘンティ・デュ―ンズなど、歴史と自然の魅力に溢れるストローン。その当地での一番のお薦めといえば、何といってもオーシャン・ビーチから望む夕日です。
実はタスマニアは島の大きさと中央が高地になっている地形のため、ホバートを始めとするほとんどの場所で夕日を見ることができません。水平線に沈む夕日を望めるのも西海岸ならではなのです。
ストローンを訪れた際には、打ち寄せる冷たい南極からの波と吹きすさぶ西風、そして沈みゆく夕日を見ながら、入植者たちの長く厳しい航海に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
このコラムの著者
稲田 正人
タスマニアのツアー・ガイド/コーディネーター。タスマニア大学で動物学・環境学を学んだ後、のんびりゆったりした生活感に魅せられ、そのままタスマニアに在住。現在は現地旅行会社AJPR(Web:www.ajpr.com.au)に勤務する傍ら、多過ぎる趣味に追われる日々を満喫中