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粘り強く、しなやかに/花のある生活

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花のある生活 第35回
─ flower in life ─

粘り強く、しなやかに

いつもと違った表情の枝ものと、ユニークな花器とのマリアージュが楽しい
いつもと違った表情の枝ものと、ユニークな花器とのマリアージュが楽しい

 人にはそれぞれ性質があるように、植物の枝にもそれぞれ特徴があります。すぐにポキっと折れてしまう枝や、上下左右と奔放な向きに成長する枝、粘り強く少々曲げても折れない枝など特徴はさまざまです。花をいける時はその植物の特徴を理解しなければ良い作品になりにくいのではないか、と思っています。

 しだれ柳のように風に吹かれても折れることが少ない枝をシャキッと立たせようと思っても無理なことで、また反対に硬い幹を花器に合わせて曲げるデザインにしたいと考えても少々難が生じます。植物をいけるにはある程度のテクニックを学ばなければいけないですが、やはりここは植物の特徴を生かして、いけてあげたいなと思うところです。

 今月の作品は山茱萸(さんしゅゆ)という花材を使用しています。山茱萸の枝はとても柔軟で粘り気(折れにくい)があり、ほのかな香りと共に黄色い花を咲かせます。いけばなの技術の基本に「切る、ためる、留める」という3つの要素があり、その他にも「編む」という方法もあります。これは単によじるだけではなく、手を放しても形が崩れないような美しい状態を目指して編んだり絡めたりしてみることです。写真の作品では枝を編むことによって平面的なものから立体的なものに造形しています。

 しなりがあり、粘りがあり、いけ手の思うままに順応してくれる花材は多様な花器に合わせることができます。さまざまな植物との出合い、自分がどのように向き合ってお花をいけていくのかは真剣勝負ですが、いつも試されているようなそんな気分で挑みます。植物に負けないようにこちらこそ、粘り強く、しなやかに行きたいものだと思います。が、そうは問屋は卸しません。負けそうになりながらの日々是精進の毎日です。

このコラムの著者

Yoshimi

Yoshimi

いけばな講師。幼少期より草月流を学ぶ。シンガポールでの華道活動を経て、現在はシドニーでいけばな文化芸術の発展に務める。令和元年には世界遺産オペラ・ハウスで日本伝統芸能祭に出演。華道教室を主宰。オンラインレッスン開催中。
Web: 7elements.me

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