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日豪フットボール新時代「大収穫」第121回

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日豪フットボール新時代 第121回
大収穫

檀崎(右)と工藤(左)にとって欠かせない存在だった千葉
檀崎(右)と工藤(左)にとって欠かせない存在だった千葉

 今年のAリーグ。ブリスベン・ロアには工藤壮人(まさと)、檀崎(だんざき)竜孔(りく)と2人の日本人選手が所属した。J1札幌からレンタル移籍の檀崎は9得点の大活躍で、ファン選出の年間MVPにも選ばれた。その成功の陰には、言葉も通じず勝手も分からない国での、若武者の生活を支える男の存在があった。その男の名は千葉大実(ひろみ)。シーズン途中からロアのホーム試合や練習で通訳を務めた。

 高校卒業後、ドイツ短期サッカー留学を経て、大学でスポーツ・ビジネスを学ぶため来豪した千葉。大学生活と両立して当地ローカル・リーグでもプレーしていたが、いつしか選手としての自分に限界を感じ始め、興味は、選手としての現役を終え、サッカーを仕事にしていくことに移行していた。大学最後の年にはQLD州のフットボール総元締めである「Football Queensland」でインターン勤務の機会を得た。

 大学卒業が決まり、帰国準備を進めていた千葉の下に、日本人選手の通訳をやらないかというオファーがロアから届いた。条件は決して良くはなく迷いもあったが、「やらないと一生後悔する」とオファーを受ける気持ちになった。通訳就任後は、英語が少し話せる年上の工藤とは違って、20歳という若い盛りの檀崎とは年が近いこともあって弟のような感覚で接した。

 しかし、そんな千葉の日本での就職活動に大きな動きがあり、シーズン途中での帰国を決意。最後の帯同試合では、檀崎が終了間際に決勝ゴールを挙げ、「喜びを一緒に味わいたかった」とピッチ外にいた千葉の下に走り寄り、その惜別のゴールを2人で我忘れて喜んだ。

 千葉は今後、Jリーグ・クラブをよりグローバルで公益性の高い事業に発展させるのに貢献したいと考えている。既に幾つかの良い話が届いているというので朗報を待ちたい。多くの人の助けを得ての当地での生活を終え、日本で夢の仕事に向けて、確実に歩を進める千葉は、豪州でその名の通り「大きな実り」を得たに違いない。

このコラムの著者

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。うえまつの呟き「日本代表も日本U24代表も本当に強くなったもんだ。かつては名前負けしていたような国々でも、苦にせず立ち向かい結果を出す。先日のセルビア代表戦では、あのストイコビッチが『日本が強過ぎて……』と弱音を吐いたとか。本当に隔世の感しきりだな」





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