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James Turrell(ジェームズ・タレル)の「Unseen Seen」

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ルーシーのアート通信

オーストラリアのアート業界で活躍中のコラムニスト・ルーシーが
オーストラリアを中心に活躍するアーティストと彼らの作品をご紹介。

第29回 James Turrell
(ジェームズ・タレル)
「Unseen Seen」

Photo Credit: MONA/Jesse Hunniford, Image courtesy of the artist and MONA Museum of Old and New Art, Hobart, Tasmania, Australia
Photo Credit: MONA/Jesse Hunniford, Image courtesy of the artist and MONA Museum of Old and New Art, Hobart, Tasmania, Australia

 ジェームズ・タレルは、芸術及び建築により社会貢献していることで世界的に知られるアメリカのアーティストだ。彼が制作する光を使った先駆的な知覚作品は非常に有名で、大規模な没入型の光のインスタレーションが広く認知されている。また、瞑想的な思考の場となるよう設計されており、取り囲まれた空間が屋根の開口部から空に向かって開かれている「Skyspace」は、1970年代にスタートしたタレルの有名なシリーズ作品だ。

 彼は、1960年代から知覚心理学や「ガンツフェルト・エフェクト」と呼ばれる知覚現象、数学、天文学を研究し続け、光と空間と色でそれらを操作する全ての方法に固執してきたという。ほとんどの場合、大規模なインスタレーションであるタレルの作品の力は、視聴者である人が全てとなる。彼が作品を制作する目的は、ガンツフェルト効果つまり感覚遮断をしばらく受け、脳に何が起こっているのかを理解させようとした際に起こる現象を表現するためだという。

 タスマニア州にあるMONA美術館(ミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニュー・アート)では、タレルのライト・インスタレーション「Armana」「Unseen Seen」「Event Horizon」により、光に足を踏み入れることができる。「Unseen Seen」と「Event Horizon」は、館内にあるレストラン「Faro」に設置され、食事をすることで鑑賞が可能となり、予約が必要だ。「Armana」は美術館の広場にあり、日の出と日の入りの時間に多くの観客を魅了する。

「Unseen Seen」は、法的権利を放棄する書面にサインした後、飛行機の搭乗口のようなドアを通り、体感することができる。大きな白い球に導かれ、湾曲した階段を上り、傾斜したベッドに横になって白い天井のカーブを見つめる。いつでも押すことができるパニック・ボタンが渡されるため、刺激が強すぎると感じた場合、ハード・サイクルとソフト・サイクルの間を選択することが可能だ。ドアが閉まると、オーブの上部が進化する明るい色のライトで照らされて明るくなり、一連の色で点滅し始めると強まる。圧倒的かつ瞑想的で畏怖(いふ)の念を抱かせ、強烈な幻覚的ビジョンが引き起こされる。タレルにとって重要なのは、言葉のない思考の体験を作り出すことだという。

このコラムの著者

ルーシー・マイルス

ルーシー・マイルス(Lucy Miles)

オーストラリアと日本のアート業界で25年以上の経歴を持つ。グリフィス大学で美術学士、クイーンズランド大学では美術史の優等学位を取得。現在、サウスポートを拠点にファイン・アート・コンサルタントとして活躍中。
■Instagram: @lucymilesfineart
■Web: www.lucymilesfineart.org
■Email: info@lucymilesfineart.org

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