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命名に関する規則~認められない名前~/法律相談室

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第78回 日豪プレス法律相談室
命名に関する規則~認められない名前~

 オーストラリアでは子どもが生まれてから60日以内に州の登記所に出生届を提出しますが、そこで最初に行われるのが名前の承認です。

 オーストラリアの親は自分たちの好みで、ただし節度のある範囲で自由に子どもの名付け(ファースト・ネームあるいはミドル・ネーム)ができます。しかし「Births, Deaths and Marriages Registration法」により、攻撃的、侮辱的な名前やタブー語として使用されるような名前は認められません。他にも“Australia”、“Anzac”、“Koala”などある種の名前、“Save Mother Earth”のようにメッセージ性のある名前、“King”のような称号も、子どもに付けることはできません。

 オーストラリアとアメリカでは、子どもの名付けに関する規則が異なります。例えばアメリカのカニエ・ウエストとキム・カーダシアンは、長男に“Saint ”という名前を付けました。しかしオーストラリアの女優テッサ・ジェームスはオーストラリアの規則上、彼女の子どもにカニエたちと同じ“Saint”という名前を付けることができなかったため、スペルを“Saynt” にしたそうです。

 日本ではかつて“悪魔”くん命名騒動がありました。“悪魔”という名前は常識を逸脱しており、子どもの名前として適切でないというのが行政の判断でした。同様にドイツでは“Lucifer”が不適切な名前とされています。アイスランドではアイスランド語アルファベットに“C”がないため、“Camilla”のように“C”が入った名前はありません。

 往年の銀幕スター、ジョン・ウェインの愛称は“Duke”でしたが、オーストラリアで“Duke”というと王室、貴族を思わせるため、名前にはできません。“Duchess”や“Sir”も同様の理由で認められません。記号が入っている名前の“P!nk”さんは、オーストラリアでは不可です。“Court”という名前はオーストラリアで認められています。なぜならこれは、“courtier” あるいは“court attendant”という意味を持つ昔の英語名Cortの異形だからです。一方で“Judge”という名前は認められていません。

 最後に、ニュージーランドで名付けられた“Talula does the Hula from Hawaii”ちゃんについて。9歳になったTalul a does~ちゃんは、改名を求めて裁判を起こしました。彼女の親はTalula does~ちゃんの親権を失うことにもなったのですが、判事はTalula does~と命名した親の浅はかな判断をとても懸念し、改名を認めました。

このコラムの著者

ミッチェル・クラーク

ミッチェル・クラーク

MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として30年の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。豪州法に関する日本企業のリーガル・アドバイザーも務める。高等裁判所での勝訴経験があるなど、多くの日本人案件をサポート。

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