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Jeffrey Smart(ジェフリー・スマート)の「Corrugated Giaconda」

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ルーシーのアート通信

オーストラリアのアート業界で活躍中のコラムニスト・ルーシーが
オーストラリアを中心に活躍するアーティストと彼らの作品をご紹介。

第30回 Jeffrey Smart
(ジェフリー・スマート)
「Corrugated Giaconda」

ational Gallery of Australia, Canberra, purchased 1976, © The Estate of Jeffrey Smart, courtesy of Philip Bacon Galleries
National Gallery of Australia, Canberra, purchased 1976, © The Estate of Jeffrey Smart, courtesy of Philip Bacon Galleries

 2021年、著名なオーストラリア人アーティストの1人として高く評価されているジェフリー・スマートの生誕100周年を祝い、キャンベラに所在するオーストラリア国立美術館(National Gallery of Australia)は10月1日から22年3月6日まで、彼の作品の展示会を開催する(クリスマスを除く)。

 1921年に誕生したスマートは、48年にヨーロッパに渡り、パリのアカデミー・モンマルトルでフェルナン・レジェの下、絵画を学んだ。ポスト印象派のポール・セザンヌ及び15世紀のイタリア人アーティスト・ピエロ・デラ・フランチェスカの視点、空間、構図の扱いに影響を受けたという。

 今回紹介するのは、1976年の彼のユーモラスな作品「Corrugated Giaconda」だ。色とりどりのポスターがひどい状態で貼られた波形成型の鉄柵の後ろに、高層ビルとヤシの木が描かれている。レオナルド・ダ・ヴィンチの新刊を宣伝するポスターの「ジャンコンダ」(モナ・リザ)の謎めいた笑顔は、オールド・マスターの作品を現代的な陳腐さで慶している。

 スマートの主な関心事は、彼の正確に考案された構成の基礎として形と色を使用する絵画の構造だと自らよく語っていたという。高層ビルとして描かれているアパート・フロアの非の打ちどころのない線の使用は、同作品の中で波形の柵の残響を反映。絵の空間を定義されたセクションに分割することは、数学的に正確で、左下から右上への対角線は、モナ・リザの笑顔をさりげなく伝えているという。

 スマートは、他のどのオーストラリア人アーティストよりも現代世界の美学を探求してきた。彼は、高速道路や空港、工場、道路標識など、時代特有の画像を描くことに専念していたのだ。また、人びとに日常のテーマを改めて見せることで、それらの中に新しい形の美しさを発見する可能性を検討するよう求めている。幾何学と構造の強い感覚と共に、ありふれた物と形而上学的な物を組み合わせたことは、スマートの芸術的なアプローチだと言える。

 スマートの芸術の演劇的な性質は、鑑賞者が自身のレンズを通して彼の作品を読み取るためのシーンが設定されている点だろう。数十年にわたり、見事に構築されたスマートの作品は、現在も人びとを魅了し続け、豊富な情報源となっているのだ。

Web: www.nga.gov.au
Instagram: nationalgalleryaus

このコラムの著者

ルーシー・マイルス

ルーシー・マイルス(Lucy Miles)

オーストラリアと日本のアート業界で25年以上の経歴を持つ。グリフィス大学で美術学士、クイーンズランド大学では美術史の優等学位を取得。現在、サウスポートを拠点にファイン・アート・コンサルタントとして活躍中。
■Instagram: @lucymilesfineart
■Web: www.lucymilesfineart.org
■Email: info@lucymilesfineart.org

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