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扶養家族による賠償請求/法律相談室

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第79回 日豪プレス法律相談室
扶養家族による賠償請求

 「相手ドライバーの信号無視による交通事故で夫が亡くなりました。私と2 人の子どもたちは、その事故に直接関係したわけではありませんが、亡くなった夫の扶養家族という立場で賠償請求を起こせるのでしょうか?」──。

 過去、オーストラリアの裁判所は「死亡」を「負傷」として考えていなかったため、加害者の過失を起因とする事故で亡くなった方の家族による、「人身傷害に関する賠償請求」を認めていませんでした。

 オーストラリアのそうした法的見解は、労災の増加、特に交通事故による死傷者の増加(昨年の交通死亡事故数は1100件以上)などの社会的背景と共に変化しました。

 故人から受けられるはずだった経済的サポートに関して、扶養家族が賠償請求を起こせることは、現在のオーストラリアにおいて遺族の基本的権利となっています。

 ただし、遺族がこうした権利を行使するには、まず第1に加害者に法的過失があったことを証明する必要があります。

 死亡者の扶養家族による賠償請求は、扶養家族1人ひとりではなく、1件の賠償請求としてまとめて行わなければなりません。

 つまり、亡くなった人の配偶者が子どもたちの分も一緒に賠償請求するため、1件の賠償請求手続きで3~4人分をカバーすることがあります。

 オーストラリアの賠償請求制度は、事故で被害者が負った精神的苦痛よりも経済的損害の方をかなり重視するため、愛する家族の死によって当然起こる、遺族の心痛に対する賠償というものはありません。

 そうした慰謝料的賠償がないなら、一体何が賠償されるのでしょうか? 死亡者の扶養家族が得られるはずだった、相応な範囲の経済的サポートに対する賠償額は、主に以下の2つの要素を考察することで算出されます。

  • 故人が家族のために提供するはずだった金銭
  • 故人が家族のために提供するはずだった家事・養育

 私が過去に担当した、事実上の婚姻関係にあったパートナーを交通事故で亡くした人と4人の小さな子どもたちによる賠償請求訴訟(高等裁判所:French v QBE Insurance ([2011] QSC 105)では、保険会社に対し、5人の遺族に76万豪ドル以上もの賠償金支払いが命じられました。

このコラムの著者

ミッチェル・クラーク

ミッチェル・クラーク

MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として30年の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。豪州法に関する日本企業のリーガル・アドバイザーも務める。高等裁判所での勝訴経験があるなど、多くの日本人案件をサポート。

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