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雪の華/花のある生活

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花のある生活 第41回
─ flower in life ─

雪の華

ニュージーランド・フラックスの固い葉を有効に生かして幾何学的に組み、季節の花アゼリアをあしらって、華やかに演出しています
ニュージーランド・フラックスの固い葉を有効に生かして幾何学的に組み、季節の花アゼリアをあしらって、華やかに演出しています

 記憶にある神秘的な自然の美しさを数えていく中で、冬生まれの私は雪の結晶を真っ先に思い浮かべます。小さな頃の話ですが、寒い冬の朝、手袋をした手を、雪が舞い落ちてくる中に広げ、目を凝らしてみた時に美しい六角形の結晶を見たように思います。今になって思い返すと、肉眼で見られたのだろうかと不思議に思う時がありますが、黒茶色の手袋をした手の中に、息を呑むほどに美しい形の記憶が鮮明に残っています。

 同じ形のものは1つとしてないと聞いている雪の結晶は雪の華のようです。花をいける時にも同じ花と花器をそろえても、同じいけばなは2つとなく、ましてや環境や状態が変われば、全く違ったものになると思います。雪は天から送られた手紙だと、そんな言葉を聞いたこともあります。気温や水蒸気の量などの条件で雪の結晶は形を変えるというのですからSFさながら不思議な魅力に溢れていますね。

 11月ともなれば、そろそろクリスマス・ツリーが町のあちらこちらにお目見えする時期ではありますが、オーストラリアのこの季節は冬ではありませんので、もみの木の飾り方もいけばなも、ひと工夫してみようと考えました。六花と言われる雪の結晶に見立て、空からくるくると舞いながら降りてくるような神秘の形をいけばなでいけてみました。銀色に着色した葉を入れてうっすらと銀世界を感じるようにいけてあります。

 大自然が幾何学模様の緻密な芸術を作れることは奇跡のように感じます。1つとして同じ形のない雪の華の、幼少期に見た瞬間の記憶を頼りに、1度魅了されてしまった美しさの感覚をたどりながら、私の求めるいけばな芸術への探求を続けていきたいと思います。

このコラムの著者

Yoshimi

Yoshimi

いけばな講師。幼少期より草月流を学ぶ。シンガポールでの華道活動を経て、現在はシドニーでいけばな文化芸術の発展に務める。令和元年には世界遺産オペラ・ハウスで日本伝統芸能祭に出演。華道教室を主宰。オンライン・レッスン開催中。
Web: 7elements.me

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