トミヲが掘る!宝石大陸オーストラリア
QLD Agate Creek – Agate
アゲート・クリークの瑪瑙(めのう)(後編)
2日目。朝食はキャンプで大活躍のフリーズ・ドライ。冬の早朝、温かいお汁粉にパンをディップして食べると一気に体が暖まる。さぁ今日はどんなすてきな石に出合えるだろうか。
向かったのは車で山道を30分強東に走ったフラナガンスというポイントだ。ゴールドコースト在住の瑪瑙研究の第一人者で、業界人必携の書「Fossicking for Queensland Agate」の著者、GC宝石細工クラブ名誉会員ポール・ハワード卿が所有する区域だ。実はこの旅の前にアゲート・クリークの話を伺いに卿のお宅にお邪魔した折、直々に立ち入り許可を得ていた。
ちなみに、アゲート・クリークのキャンプ場で熱いシャワーで疲れを癒やせるのは、シャワー設備を寄付したハワード卿のお陰。このポイントはキャンプ場から距離があり、立ち入り禁止の看板もあって大物発見の期待が高まる。
干上がった川を奥へと進むと、川幅は昨日よりは狭く約2メートル。至る所に木や草が茂るが、こちらも昨日同様に宝石だらけだ。
木の根周辺に比較的大きな石が多く溜まっているように感じ、木の根元を中心に探る。すると、丸みを帯びた薄黄色の石が頭を少し出している。ピック・ハンマーと手で引っこ抜くと、拳2個ほどの馬鈴薯のような形の瑪瑙が姿を表した。サイズ・形共に申し分なしの良物だ。
味を占め、木の根を中心に探すと、今度はティッシュ箱大の大物を発見。しかも石の端からは赤や黄、深緑色が既に見え隠れしている……。ついお約束の雄叫びが上がる。こんなすてきな瑪瑙と出合えるなんて、ハワード卿に許可をもらっておいて本当に良かった。
昼食後はキャンプ場近くのクリスタル・ヒルというすてきな名の丘を攻める。頂上には、アゲート・クリークを愛して止まなかった先人の墓が3基。それぞれの墓石には瑪瑙が埋め込まれ、眼下にはアゲート・クリーク全体を見渡せる絶景が広がっていた。下山し、ふと丘のふもとを掘ると、先人たちの思し召しか、リンゴ大の物が次々に出てくるではないか……。
キャンプ場に戻り、大量採取した瑪瑙を選別する。そして質の悪い物を積み上げてかまどを作り煮炊きするという、石掘りならではのぜいたくを堪能する。焚き火の炎でゆらゆらと優しく輝く瑪瑙のかまどで焼く肉の味は、格別。ついつい、「うめぇのう」なんて台詞が口を衝く(笑)。
テントに入り、本日最大の大物の瑪瑙を枕に、馬鈴薯瑪瑙を抱き締めながら、満足感に浸りながら消灯。今日も良い夢が見られそうだ。
このコラムの著者
文・写真 田口富雄
在豪24年。本職の不動産仲介業の傍ら暇を見つけては愛用のGoProを片手に豪州各地を掘り歩く、石と旅をこよなく愛するトレジャー・ハンター。その活動の様子は、公式YouTubeチャンネル(Web: youtube.com/user/gdaytomio)で楽しめる。現ゴールドコースト宝石細工クラブ理事長