日豪フットボール新時代 第124回
継承者
予言的中。前回、「Wリーグを目指す日本人選手のフロント・ランナーと言って差し支えない」と名を挙げた北野梨絵(29)の来季からのブリスベン・ロア・ウィメン入団が決まった。
今季、QLD州女子1部(NPLQW)で躍進したサウス・ユナイテッドの攻撃の中心だった北野。3年弱という豪州でのキャリアでMFながら31ゴールを挙げてきた活躍や、今季の出来を考えれば、最近とみに地元重視の傾向を強めるロアの補強戦略のレーダーに入って当然。過去にもロアからのアプローチがあったと聞けば、その知らせに全く驚きはない。それでも、前回取り上げた立岡幸子(元ブリスベン・ロア・ウィメン)以来の国内下部リーグからの“ナデシコWリーガー”誕生には感慨もひとしおだ。
自らのセールス・ポイントを「左右両足での長短のパスと思い切りの良いミドル・シュート」と語る攻撃的MFは、パスもシュートも卓越したものを持ち、昨季の終わりには州選抜にも選ばれた。心機一転、今季から移籍したブリスベン南郊に本拠地を置くサウス・ユナイテッドでの大車輪の活躍が認められ、Wリーグへの個人昇格を引き寄せた。
ロア入団が報じられた翌々日、サウス・ユナイテッドの練習場に北野を訪ねた。待ちに待ったチャンス到来に喜びを隠さないものの「全く緊張していません。とても楽しみです」と気負いは見せず、Wリーグの初めての舞台にも臆せず挑戦しようとする姿勢は何とも頼もしい。
幾つかの候補から選べたという背番号は、攻撃的MFに相応しい1桁の番号も残っていたものの、日本人らしい奥ゆかしさで14番を選んだ。しかし、いざピッチに立てば、そんな遠慮などどこ吹く風で暴れてくれるに違いない。トレード・マークの爽やかな笑顔と共に、来季のWリーグで凛と咲くであろう一輪のナデシコ。まずは、ナデシコ・フットボーラーの先駆者の思いを引き継ぎ、次世代につないでいく継承者の降臨を心から祝福したい。
このコラムの著者
植松久隆(タカ植松)
ライター、コラムニスト。うえまつの呟き「W杯アジア最終予選が始まった。日本ではついにアウェー戦の地上波放送がなくなり物議を醸し、かたや豪州では久々にサッカルーズの試合が地上波に戻ってきた。フットボール人気が根付いた日本、なかなか根付かない豪州。その成績も併せて、何かと好対照で面白い」