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夏を彩る白花畑は危険な香り/タスマニア巡り

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第13回 タスマニア巡り
夏を彩る白花畑は危険な香り

夏を彩る満開の除虫菊畑
夏を彩る満開の除虫菊畑

 12月になるとタスマニアは、ようやく夏らしくなります。晴れの日に、さまざまな景色が見られるこの季節はツアーのロング・ドライブも苦になりません。いつもは代わり映えのしない農場地域も白や黄色に彩られ、ツアー参加者に限らず我々ガイドの目も楽しませてくれます。

 さまざまな農作物が育てられているタスマニアですが、広大な畑を一色に染めるほどの花を付ける作物というのは多くありません。特に12月から1月にかけ、よく目にする白い花畑を成すのはたった2つ、ケシと除虫菊だけ。日本ではまず見ることがないこの2つ、実はタスマニアは世界に誇る生産地なのです。ケシは医療用麻酔薬の原料として、また除虫菊は蚊取り線香などの殺虫剤用の天然素材として世界シェアの数十パーセントを占めるという、州きっての農産業になっています。

 遠目の美しさとは反対に管理は厳重で、もちろん立ち入りは厳禁。特にケシ畑は有刺鉄線などが張り巡らされ注意書きのサインが至る所に表示されています。ただし場所によっては一般道に接して栽培されているので、多くの観光客がすぐそばに車を停め写真を撮っているのを見掛けますが、あまりお勧めできません。休憩に少し駐車しただけで、翌日に警官が写真を持って訪問してきたという話もあるくらいです。

 ケシと除虫菊どちらの花も白く、遠目では区別が難しいかもしれません。見分け方は色合い。除虫菊は中央部が黄色なので畑全体が少し黄味がかって見えます。逆にケシは輝くような白が多く、ごく稀に赤いものが混じることも。

 北部ロンセストンの少し南辺りから北東部スミストン周辺が主な生産地になり、この2つの街をつなぐバス・ハイウェイを走れば、左右の平地や丘をじゅうたんのように白く彩る花々が目を楽しませてくれます。収穫期間を長くするため植え付けをずらしているので、畑ごとに開花が異なり、初夏から1カ月ほどが見頃。長く楽しめるタスマニアの夏の風物詩の1つです。

このコラムの著者

稲田 正人

稲田 正人

タスマニアのツアー・ガイド/コーディネーター。タスマニア大学で動物学・環境学を学んだ後、のんびりゆったりした生活感に魅せられ、そのままタスマニアに在住。現在は現地旅行会社AJPR(Web: www.ajpr.com.au)に勤務する傍ら、多過ぎる趣味に追われる日々を満喫中。

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